北海道庁函館支庁函館区役所から北海道庁函館区役所へ

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 函館区役所も北海道庁が設置された時、函館県函館区役所から北海道庁(函館支庁管下)函館区役所となり、元函館県函館区長林悦郎(18年10月26日に函館区書記(区長代理)から昇任…月俸35円)が北海道庁開庁直前の19年2月23日に北海道庁函館区長に任命され、3月1日から北海道庁函館支庁函館区役所の看板のもと事務取扱いが開始された。当初は函館支庁の管轄下にあり、函館県の時と代わりないすべり出しであったが、前述のごとく開庁早々に函館支庁が廃止されたため、郡区役所が北海道庁に直属して地方行政を担当することとなり、函館区役所の管轄区域は函館区となった。函館支庁が廃止された12月28日、函館区長には函館県のときから引き続いて勧業課長を勤めていた道庁属の二木彦七が任命(奏任官5等上級俸…年俸900円)され、亀田上磯郡長も兼ねた。この時、箱館奉行時代以来函館の役所が直轄区域としてきたところは、函館を除く亀田郡と上磯郡が1つの郡役所(亀田郡外1郡役所)、茅部郡と山越郡が1つの郡役所(茅部郡外1郡役所)担当となっていたが、21年3月3日には全域を1つの郡役所(亀田外3郡役所…郡役所は七飯村に置かれる)が担当することとなった。同年2月23日には茅部山越郡長の中村修が亀田上磯茅部山越(亀田外3郡)郡長に任命(奏任官4等上級俸…1200円)され、二木彦七は亀田上磯郡長兼務を免ぜられた。
 3職を兼務したときの二木彦七の正式な肩書きは北海道庁理事官兼函館区長・亀田上磯郡長というものであった。19年12月28日の道庁の官制改正は表3-2の通りであるが、区役所の分課は函館県の時以来の戸籍科、収税科、出納科、勧業科、庶務科の5科のままで、函館県時代に船見町に移転していた庁舎を元町の函館支庁跡に移して、20年1月23日から業務を開始した。林悦郎前区長は岩内古宇郡長(奏任官6等上級俸…年俸600円)に転出した。その後郡区役所の分課は、道庁の部制に整合する形で表3-3の通り定められ(20年5月10日訓令第33号)、3課制となった。
 
表3-2 本庁分課
部名
分掌事務
分課
第1部文書往復、褒賞賑恤、外国人
他部ノ主掌二属セザル事務
兵事社寺戸籍及区町村費
衛生(警察、監獄)
職員進退及官印庁印管守
編輯統計報告
学務
庶務

郡治
警保
職員
記録
教育
第2部農商工及漁猟(殖民、博物)
地理山林
水陸運輸(駅逓郵便)
農商
地理
逓信
第3部河港堤防道路橋梁排水溝渠、鉄道工事
官衙建築修繕
土木
営繕
第4部金銭物品ノ管理
予算決算、出納収支
公債証書諸貸下金及準備米
 (官有財産、調度物品、庁中取締)
国税地方税賦課徴収
検査
出納
公債
用度
租税

明治19年12月28日勅令第83号、庁令第1号より作成

 注 各部の部長、次長には理事官がなる。事務分掌中のカッコ内の事項は、明治20年5月9日訓令第28号北海道庁処務細則で補ったものである。次いで明治22年2月1日の改正で、第2部と第3部を第2部と、第4部を第3部と改正している。
 
表3-3 郡区役所分課
課名
分掌事務
第1課職員進退及官印庁印管守、文書往復及編輯統計報告、学務衛生
兵事社寺戸籍賑恤及区町村費、他課ノ主筆二属セザル事務
第2課農商工及漁猟、地理山林、水陸運輸、土木営繕
第3課予算決算、出納収支、諸税賦課徴収、官有建物及庁中財産管守、
物品購入及交付、公債証書諸貸下金及準備米

明治20年5月10日訓令第33号『明治二十年北海道庁布令全書』より作成

 
 23年2月22日、2年余にわたって区長の職にあった二木彦七に代わって、檜山爾志郡長の添田弼が函館区長に任命(奏任官6等…年俸600円)された。彼は理事官兼務でなかったため、前述のように長官出張所には別に理事官が置かれることになったのである。二木彦七は3月25日付けで非職となった。非職というのは行政改革を推進する上で官吏救済のために設けられた制度のようで、明治17年1月4日に「官吏非職条例」というものが公布されている。廃庁廃官または事務の張弛その他疾病等の事故の際に命ぜられるもので、地位はそのまま職務だけを免じ、俸給3分の1(24年4月1日からは支給せず)が3年間大蔵省から支給され、居住地は自由(該庁長官に届出)、商売を始めるのも自由(該庁長官の許可を得)であった。先に函館支庁が廃止されたおりにも、次長堀金峰理事官以下大量の非職発令があった。長官出張所が廃止されたときも、出張所詰理事官小野修一郎が非職発令を受け帰京している。函館区長は長官出張所の事務を引き継いだことにより、次の訓令号外(9月9日付)によって特別手当400円が支給されることとなった。
 
     訓令号外
                   函館区役所
  交際手当トシテ函館区長ヘ一ヶ年金四百円給与ス、但本金額ハ明治二十三年七月三日ヨリ計算スル義ト心得ベシ
(明治二十三年『北海道庁布令全書』)

 
 その後添田弼区長が約11か月ほど在職後、24年1月24日に室蘭外5郡長(奏任官5等中級俸…年俸800円)として転出し、その室蘭外5郡長であった椎原国太が後任の函館区長(奏任官6等上級俸…年俸600円)となったのであるが、函館区長専任ということに変化はなかった。