庶庫略則 |
一 庶庫ハ火薬、硝石精、石炭油、タル、ピッチ或ハ爆発スヘキモノ又ハ燃易キモ、其他危害ナルモノ等ヲ除クノ外、其余ノ品ハ有税無税ニ関ラス一切入庫スルヲ得ヘシ |
一 壱棟或ハ一区ヲ借請ル向ハ外戸ノ鑰鍵ハ税関ニ留メ内戸ノ鑰鍵ハ其借主ニ貸渡スベシ |
一 壱棟又ハ一区ヲ借請ズ唯其坪借ノ向ハ内外戸ノ鑰鍵共税関ニ管シ且他ノ借主ノ貨物ト一区内ニ混入スルヲ以テ其借主ノ請求ニ応ジ入庫セシ箇数ノ見届証書ハ税関ヨリ付与スベシ、尤入庫ノ時包箱ノ外面聊タリトモ破損セルハ之ヲ調整シ又之ヲ固封スルニ非ザレハ其見届ケ証書ヲ付与セザルベシ |
一 入庫中貨物危難ノ請負ハ勿論損傷及ヒ紛失等ニ至ル迄一切其借主ノ引請ニシテ税関ニテハ更ニ関係ナカルヘシ |
一 庶庫ノ開閉ハ休日祭日ヲ除キ毎日日出ヨリ日没ヲ以テ限トス其時間ニ貨物ヲ出入スルハ其貨主ノ随意タルヘシ |
一 敷料ハ壱ヶ月壱 ニ付 ノ割合ヲ以テ毎月末又ハ貨物悉皆出庫ノ時ニ之ヲ納ムヘシ但シ端日数ハ十五日内外ヲ以テ全月半月ヲ区分スヘシ |
一 若シ税関ニテ庶庫要用ノ事アラハ壱ヶ月前ニ其旨借主ニ報知スベシ其期ニ至テハ返却遅滞スベカラズ |
(『北海道開港外国貿易機関之状況』) |
表5-4 庶庫敷料
『北海道開港外国貿易機関之状況』より
品 目 | 単 位 | 金額 |
米及雑穀 同上 長切昆布 刻昆布 大山酒 大阪酒 紋鼈産菜種 紋鼈産白砂糖 阿波産煙草 敦賀ローソク 判綿 索麺 (5貫目入10貫目入平均) | 1俵4斗入 同3斗入 100斤 1函 1樽 同 1叺 1個 1函 1函 1個 1函 | 1銭 8厘 1銭 8厘 8厘 2銭 1銭 1銭 6厘 8厘 3銭 5厘 |
また、この当時の庶庫の敷料は、坪貸は1坪に対し1ヶ月正貨1円(又は洋銀1ドル)、箇数の場合は一か月につき表5-4の通りであった。
敷料は本邦の正貨及びメキシコ銀を以て徴収したが、当時本邦紙幣は未だ兌換制でなかったため、紙幣増発の結果として硬貨と紙幣との価格差が生じ、明治16、7年の頃は硬貨の1円は紙幣の1円5、60銭から1円7、80銭となり、紙幣価格が非常に下落し、正貨は全く市場に跡を絶ち、敷料を納付するのに非常に不便を感じたのみならず、当時三菱会社函館支社が付属倉庫を新様式で落成させ、ここにおいて倉庫の供給を一変するに至ったため、税関庶庫に庫入するものが、ほとんどないという状態となった。そこで明治17年4月から内国人に限り紙幣を以て敷料を納付することを許し、又同時に倉庫1戸貸の道をも開いたのである。
この時の1戸(30坪)貸しの敷料は、1か月で12円50銭(坪当たり41銭7厘)であったが、19年12月に改正されて、12月より7月までの6月間は1か月(30坪)に10円、8月から翌年1月までの6か月は、同じく20円となり、平均1坪1か月で50銭に相当した(前掲書)。
上屋の設置については前述したとおりであるが、明治17年には、上屋も内国人に対して坪貸しすることに決し、次の規則によって開放した。
貨物上屋入規則 |
第一条 内国人民ニシテ内国回漕貨物ノ上屋入リヲ願ヒ出ルトキ税関ニ於テ差支ナシト認トキハ之ヲ許スヘシ但貨物物品置場所ハ係官吏ノ差図ヲ受クヘシ |
第二条 火薬硝石硫黄タールピッチ石油ノ如キ危険物ヲ積入レ或ハ上屋内ヲ汚スヘキ質ノ物品ハ総テ貯入スルヲ禁ス |
第三条 上屋内ニ於テ吸烟ハ勿論火其他発火シ易キモノハ一切使用スルヲ禁ス |
第四条 上屋貨物ノ出入時間ハ税関休日ヲ除キ毎日日出ヨリ日没マデトス若此時間外ニ出入ヲ要スルトキハ之ヲ税関ニ届出テ認可ヲ受クヘシ |
第五条 税関官吏ハ貯入貨物ヲ点検スルタメ何時ヲ論セス上屋内ヲ巡視スルコトアルヘシ |
第六条 貯入貨物ニ天災若クハ盗難鼠喰其他ノ事故ニ依リ損害ヲ生スルモ税関ヲ於テ一切其ノ責ニ任セス |
第七条 貯入貨物二日間迄ハ敷料相納ムルニ及ハストイエドモ三日以上ハ日数ニ応シ左ノ割合ヲ以テ金額ヲ貨物引取ノ際ニ上納スヘシ、但シ日数ハ午前午後ヲ論セス総テ一日ト為スヘシ上屋一坪ニ付キ一日金一銭 |
第八条 貨物貯入ハ三十日間ヲ以テ期限トス満期ニ至リ猶引続キ貯入ヲ願フ貨主ハ前期敷料上納ノ後更ニ願書ヲ差出シ許可ヲ受クヘシ其満期々日ニ至リ貨主之ヲ引取ラサルトキハ税関ニ於テ之ヲ庶庫若クハ上屋外ヘ移シ該運搬ニ関スル諸費ハ一切貨主ヲシテ弁償セシムへシ、但、引続キ貯入ヲ願フモノハ其当日ヨリ敷料ヲ上納スヘシ |
第九条 貸渡期間内ト雖モ税関ニ於テ所要有之節ハ二日前ニ貨物ノ引取方ヲ達スヘシ若シ期日ニ至リ貨主之ヲ引取ラサルトキハ第八条ニ準シテ処分スヘシ |
第十条 第八条第九条ノ場合ニ於テ庶庫ヘ引移シタル貨物ハ庶庫貸渡規則ニ依リ敷料ヲ徴収スヘシ |
第十一条 前条々ノ如ク定ムルト雖モ税関ノ都合有之節ハ追加又ハ改正等為スコトアルヘシ |
(前掲書) |