かくして、函館倉庫業は、海運業、商業、金融業と、分化し、独立業種として成立した。
組合は、取扱要項を次のように定めた。
表5-5 倉庫業組合加盟者
『北海道倉庫業』より
注 皆月善六倉庫はその後山県勇三郎と共同営業をしている
名 称 | 設立年月 | 住 所 | 種 別 |
渡辺熊四郎倉庫 北海道共同株式会社倉庫 函館汽船株式会社 藤野四郎兵衛倉庫 辻快三倉庫 安田商事合名会社倉庫 西出孫左衛門倉庫 山田啓助倉庫 皆月善六倉庫 | 明治20年 明治20年頃 明治22年12月 明治25年 明治25年 明治25年10月 明治26年 明治26年 明治28年 | 船場町 船場町 東浜町 仲浜町 仲浜町 仲浜町 | 煉瓦、木造 煉瓦 煉瓦 煉瓦 煉瓦、石造、土蔵 煉瓦 木造 |
注 皆月善六倉庫はその後山県勇三郎と共同営業をしている
函館倉庫業組合貨物取扱要項 |
一 倉庫ハ貨主ヨリ貨物蔵入ヲ申込ムトキハ必申込書ヲ要シ現品調査ノ上倉入スルモノトス |
一 保管貨物証券記入方ハ員数ハ勿論升目物ハ升位ニ止メ貫量物ハ貫位ニ止ム、但貫量物ハ俵装縄掛等総テ現形ノ儘ヲ云フ |
一 米麦雑穀及肥料凡テ個数ヲ以テ保管料ヲ定メタルモノ百個以内ハ定額ノ一割五分増ノ事、但シ四捨五入ノ法ヲ以テ之ヲ厘位ニ止ム |
一 鹹魚ハ種類産地(国名)尾数ヲ記入ス、但量目記入ヲ要スルトキハ平均量目ノ二割減、端目ハ十匁以下記入セス |
一 表面散鮭鱒ハ尾数ヲ以テ保管料ヲ定ムト雖トモ尾数ニ対スル凡ソ四千貫ヲ以シ其標準トナシタルモノナレバ現状貫量ノ多キトキハ其都度保管料ヲ査定スルモノトス |
一 長切昆布ハ長尺、中尺、短尺、産地(国名)束数記入ノコト |
一 保管貨物ノ見本摘出又ハ一見ヲ求ムルモノハ必ス預証持参スルモノトス |
一 保管貨物ノ乾燥又ハ荷造変更スルトキハ預証券持参スベシ、若シ減量又ハ異状アルトキハ其理由ヲ証券ニ記入スベシ |
一 散鮭ハ一千尾ニ付三尾、散鱒ハ一千尾ニ付六尾、散折昆布ハ一千把ニ付三把ノ不足容赦ヲ証券ニ記入スヘシ |
一 保管料ハ貨物出庫ノ際支拂ヲ受クベシ |
一 貨物入庫人夫ハ総テ倉庫人夫ヲ以テシ其費用ハ貨主負担ノ事、但シ散鮭鱒折昆布ハ員数受授ニ限リ特ニ倉庫常人夫ヲ以テス其費用ハ寄托者之ヲ負担スルモノトス |
一 保管満期又ハ証券書換ノ際ハ更ニ貨物ノ調査ヲ行フモノトス、其費用ハ寄托者ノ負担トス |
一 預リ証券書換又ハ商法第三六一条ノ場合若クハ同種数ノ貨物ニ付証券ノ分割ヲ求ムル時ハ、貨物ノ多少ニ依リ一通乃至三通以外預証券、質入証券各一葉毎ニ手数料トシテ金五銭ヲ要ス |
一 寄托貨物保管上寄托者ハ売買譲渡ノ場合ハ其旨倉庫者ヘ通知アルヘシ |
右ノ通 |
明治三十三年十月 |
(『北海道倉庫業』) |
同書に、庫入貨物申込書、預証券様式(表、裏)、質入証券様式(表、裏)、仮庫入証(表、裏)が示されている。以上の取扱要項は、組合の従来の取扱要項を基礎としながら、明治32年3月9日法律第48号「商法」にのっとって、補足、改正したものである。もっとも、倉庫業法の成立は、はるか、未来の昭和年代のことに属する。