一方、函館の移出入の対全道比は、上昇する傾向にあり、明治14年には、移出が271万円余、対全道比38.5パーセント、移入が862万円余、70.0パーセント、移出入総額1133万円、対全道比58.5パーセントで、北海道に出入する物資の約6割が函館を経由していた。
また、新興の小樽は、明治12年には、移出入総額で全道の14.4パーセントを占め、江差を上回ったが、明治14年のそれは、11.1パーセントに低下している。港湾商業都市としての基礎が浅く、開拓使の施策に左右されたためであろう。
この時期の北海道の内国貿易は、わが国の商品流通に意外なほど大きな位置を占めていた。山口和雄「明治十年代の北海道貿易」(『明治前期経済の分析』)は、明治10年代前半の統計を使い、北海道は全移出額において三重、大阪、兵庫についで第4位(東京を除く)、全移入額においても東京、大阪、三重についで第4位で兵庫を凌駕しており、北海道の移出入は、わが国の外国貿易額に匹敵していたと指摘している。この北海道の移出入額の6割を占めていた函館の港湾商業都市としての実力も、おのずから明らかであろう。
表6-1 北海道管外移出入品価額港湾別(明治10~14)
『北海道史』付録より作成
年 次 | 区分 | 全道 | 函館 | 福山 | 江差 | 小樽 | |||||
金額 | 比率 | 金額 | 比率 | 金額 | 比率 | 金額 | 比率 | 金額 | 比率 | ||
千円 | % | 千円 | % | 千円 | % | 千円 | % | 千円 | % | ||
明治10 | 移出 移入 計 | - - - | - - - | 800 876 1,676 | - - - | 359 308 667 | - - - | 446 321 767 | - - - | - - - | - - - |
明治11 | 移出 移入 計 | - - - | - - - | 1,593 2,082 3,675 | - - - | 531 326 857 | - - - | 699 467 1,166 | - - - | - - - | - - - |
明治12 | 移出 移入 計 | 6,001 5,491 11,492 | 100 100 100 | 1,821 3,023 4,844 | 30.3 55.1 42.2 | 690 487 1,177 | 11.5 8.9 13.3 | 845 729 1,574 | 14.1 13.3 13.7 | 855 795 1,650 | 14.2 14.5 14.4 |
明治13 | 移出 移入 計 | 7,478 10,028 17,506 | 100 100 100 | 2,297 5,194 7,491 | 42.2 51.8 42.8 | 790 822 1,612 | 10.6 8.2 9.2 | 1,141 1,391 2,532 | 15.3 13.9 14.5 | 1,094 1,469 2,563 | 14.6 14.6 14.6 |
明治14 | 移出 移入 計 | 7,042 12,326 19,368 | 100 100 100 | 2,713 8,623 11,336 | 38.5 70.0 58.5 | 502 630 1,132 | 7.1 5.1 5.8 | 927 1,034 1,961 | 13.3 8.4 10.1 | 875 1,279 2,154 | 12.4 10.4 11.1 |
『北海道史』付録より作成