増改築は、29年度に大改築を予定しながら同年の火事による材料費や職人の賃金の上昇により延期されていた宝小学校の大改築が、30年7月に着工、9月に竣工(明治29年「臨時函館区会決議書」)したのをはじめ、30年代には就学児童数の増加や未就学児童の収容増加のために、あるいは校舎の老朽化のために、毎年校舎の増改築が行なわれてた。各年の『函館区事務報告』から関係部分を拾ったのが表10-11である。1教室70名を定員とすると、33年には一挙に約1200名、36年には約2000名もの児童の収容増加が可能となり、就学率も35年から37年にかけ73.22、87.90、90.90(各年『函館区事務報告』)と伸びた。
表10-11 明治30年代学校施設の整備状況
校名 | 起工 | 竣工 | 施設 | 坪数 | 費用(円) | 内容 |
東川小学校 幸小学校 住吉小学校 | 33年4月 〃 4月 〃 6月 | 33年8月 〃 5月 〃 7月 | 教室14 講堂1 体操場 物置1 教室3 体操場 | 649 62 59 | 18,900 870 1,170 | 新築 増築 新築 |
弥生小学校 女子小学校 亀田小学校 | 34年4月 〃 4月 〃 4月 | 34年8月 〃 8月 〃 8月 | 教室4 教室3 教室1 | 77 90 25 | 1,936 1,948 655 | 増築 増築 増築 |
高砂小学校 住吉小学校 | 35年4月 〃 4月 | 35年6月 〃 6月 | 教室5 教室2 | 174 72 | 5,280 1,975 | 増築 増築 |
若松小学校 弥生尋常小学校 | 36年4月 〃 7月 | 36年8月 36年度中 | 教室14 体操場 奉置所ほか 教室14 事務室 体操場ほか | 726 826 | 24,182 24,459 | 新築 改築 |
住吉小学校 | 38年度 | 38年度 | 教室18 宿直室 体操場ほか | 1007 | 31,319 | 改築 |
弥生高等小学校 | 39~40年度 | 40年度 | 教室19 事務室 体操場ほか | 1000 | 35,198 | 改築 |
各年『函館区事務報告』・「区内区私立小学校沿革要記」より作成
34年の弥生小学校は弥生高等小学校のこと
なおこの時期、函館で単独の高等小学校は、22年に尋常科卒業以上の女子を対象に公立函館女学校として開校、26年に改称した函館女子高等小学校のみだったが、就学児童の増加にともない、29年の区会に、弥生・宝の高等科を分離して、船見町49と天神町88にかかる租税検査員派出所跡地に単独の高等小学校を新築開校してはという建議が提出された(明治29年1月開会「通常区会議事筆記」)。区会では函館の東部への発展を考慮し学務委員らと相談の結果、「人口増加ノ状勢」に対処し高等小学校は2校開設したいが、「区費多端」の今年度(29年度)ではそれは無理なので、とりあえず宝小学校に2教室を増設して高等科の児童を収容し、弥生小学校には仮に船見町47~9に弥生小学校分校を開設し高等科の児童を収容することで急場をしのぐことにした(明治29年「臨時函館区会決議書」)。
この分校は34年4月弥生小学校から完全に分離独立し、「弥生高等小学校」として開校した。弥生高等小学校は9教室に487名の児童を収容した4年制の男子の単独高等小学校だった(河野文書「函館区史編纂資料三」北大蔵)。