一回仕入れた赤かぶの種は普通四、五年は栽培し、種子は翌年自分で取った。種子取りの方法は、秋に収穫したかぶの中から三寸くらいの物を選び、葉の先を少し切り、肥料をほどこして畑に植え込むが、冬を迎えるために、それに一尺ばかりの土をかぶせて葉の先端を少し出す。翌春、葉が伸びて、六月ころに黄色の花が咲き、種ができる。
種を植えるのはいも掘りの終わった八月十日前後である。二尺四寸の低く平らなうねに数個の種を七寸間隔でちどりに播いていく。肥料は人糞に過燐(りん)酸、硫安などを用いた。九月上旬に間引きをして十月下旬には取り入れるが、現在のように、根の一部にこぶができて実が大きくならない根粒病もなかったので、毎年同じ畑に植えたものだという。
特に多く栽培していたのは亀田川流域の赤川、神山、鍛治方面であった。この地域の土は黒土ではなく川砂まじりの赤土であり、かぶの栽培には適していたという。
よその土地の紫色のかぶに比べて、亀田村の赤カブは鮮紅色であり、食紅を添加しなくても真っ赤な千枚漬ができた。肉質もやわらかく、函館はもとより小樽、札幌方面へも供給した。
赤かぶの作付面積と生産高