経済変動への対処

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 農地改革実施の進捗に従って村農業の態勢も次第に落着きをみせてきたころ、経済界にあっては統制経済から自由経済への移行がなされつつあったが、この経済変動に対処するため亀田村の産業振興対策計画はどのように樹立されたかを昭和二十六年度についてみる。
 産業振興対策は、農業経営の合理化と生産増強、病虫害防除の徹底、畜産振興、農業改良事業の促進に重点をおいているが、これらの各事業は、村内産業団体ならびに関係機関の協力支援により、予期以上の成果を挙げているが、事業の概要については次のとおりである。
 
一 昭和二十六年度農業生産計画の達成
 ア 雑穀の統制撤廃 米・麦の事後割当制度への復帰に伴い、本年度の農業生産計画の樹立に当っては、農業の自主的な計画を尊重し、統合的な見地から一応の目標を示すこととし、政府の食糧増産興農運動にこたえて食糧作物の一割増産の達成を期する。
 
 イ 地力培養実施促進について 地力の培養は農業生産の基本であり、常時心がけるべきことであるが、最近の金融逼迫や使用機械の効率および運用計画の適否などにより思わしからざる現状であるので、本年度は、これらの点を改良するとともに必要な諸施策を併せ講じ、生産の基礎となる地力の培養を促進する。
 
 ウ 優良種苗の増殖普及について その徹底を期するため、次のとおり採種増殖圃を村において経営する。
  (ア) 馬鈴薯原種圃 一〇町歩
  (イ) 万畳敷馬鈴薯原種試作圃 一反歩
  (ウ) 水稲雑穀採種圃は前年に引続き農家の自家採種圃を勧奨する。
       馬鈴薯採種圃と蔬菜採種圃も同様とする。
 
 エ 病虫害防除の徹底について 各種作物の一割以上の生産増強を目標に全力を指向するため、病虫害防除の徹底を期し、特に水稲、麦、馬鈴薯を対象として共同防除および一斉防除を徹底的に推進し、村共同防除班の活動により防除の完璧を期する。
 
 オ 農村工業の振興について 農村工業の振興によって農村経済の緩和を図るのは極めて緊急であって、技術の改善向上と第一次加工から第二次加工へと高度な製品分野を進めて振興を期するもので、
  ○ 各種加工施設の高度な改善と
  ○ 経営改善の指導を図る。
 
 カ 農業指導実践集落の設置について 本村農業改良指導員と協力の上高度の技術を結集し、指導センターとなる指導実践集落を前年に引続き設置して農業の振興を図る。
 
 キ 各種作物の増産奨励について
  (ア) 食糧作物の増産奨励については、馬鈴薯の統制撤廃に引続き、本年度は雑穀の統制が撤廃されたが、食糧増産、興農運動にみられるように、国内食糧の自由度の向上と、これによる自立経済の達成は、客観情勢から極めて重要であるので、この増産達成に努める。
  (イ) 工芸作品物の栽培奨励については、適地適作の経営合理化と農業経済の充実を図る見地から「甜菜」の栽培を奨励する。
  (ウ) 園芸作物の増産奨励については、本村の蔬菜は函館市の大消費地を擁し、終戦以来独占的市場を獲得していたが、蔬菜の統制撤廃に伴い、内地産および奥地からの入荷が増加したことにより、農家の受ける打撃は甚大となり、生産者に不利を招いているので、品質の向上を図り、生産と販売に企画性をもった増産奨励をする。
   ○ 園芸作物栽培経営指導地の設置(一か年三反歩)
   ○ 園芸作物試作圃設置(一反歩)
  (エ) 飼肥料作物の増産奨励については、馬鈴薯、雑穀の統制撤廃に伴い、自主的に飼肥料作物栽培が可能になったので、反別の確保、反収の増加等合理的作付配分を図り、自給度の向上を図り、農業経営の合理化を図る。
  (オ) 農業指導陣の強化については、本村農業専門指導員は、農業改良相談所二名のみにして、九二二戸の農業指導は容易でない現況にあるので、本年から村役場に専任者を増員して指導の完璧を期する。
  (カ) 灌漑用貯水ダムの築設については、亀田川水系の灌漑不足用水補充のため、関係者の水利組合を組識せしめて字陣川に貯水ダムを築設の上、水稲増産の確保を図る。
 
二 林業奨励について
 ア 造林奨励については、農業経営の基礎をなす土地の生産力を増大し、一面生産生活資材の需給を円滑にするには、森林保全は不可欠であって、本村においては天然林の撫育、人工造林の適地が多いので森林組合と協力して、この推進につとめる。
 
 イ 森林愛護については、林業は長年たゆまぬ育成と愛護が必要なので、植林による緑化とともに森林の愛護を推進する。
 
三 副業奨励について
 副業により農家経営の充実を図るため、前年度に引続き次の副業を奨励する。
  ア 養鶏  イ 椎茸栽培  ウ ヘちま栽培
 
四 畜産の振興について
 本村農業の堅実な発展を図るには、立地条件に即応した農業経営の形態をとり、畜産に結びついた合理的経営を緊要とするので、前年度に引続き畜産振興の万全を期する。
  ア 道貸付雌牛導入         イ 道貸付種綿羊導入
  ウ 道払下種鶏雛導入        エ 綿羊導入奨励補助
  オ 家畜防疫の徹底         カ 共同放牧地の設置
 
五 開拓地営農指導について
 緊急開拓事業が開始されて以来五か年を経過した今日、本村の入植戸数は四二戸に達し、その営農状況は漸次安定の方向をたどりつつあるが、重点的指導を加え営農の安定を期する。
  ア 開墾促進と作物面積の増大を図る イ 家畜導入
  ウ 道路網の完整          エ 開拓農業協同組合の設立促進
 
六 農業金融対策について
 農家経済の逼迫に伴う営農資金の確保はまことに重要であるので、次によりこの融資の導入措置を講ずる。
  ア 営農資金対策          イ 農業長期資金
 
七 農業協同組合の運営強化について
 農業協同組合の運営は農業振興の基礎をなすもので、設立後三年を経過した今日、経営は種々な原因事情から悪化の徴候を示し、経営不振となった。政府としても全国的なこの傾向の対策として諸般の施策を講じ、組合育成の強化を図っているため、逐次円滑な経営に好転する見込みなので、この運営強化に努める。
  ア 自立経営意識の高揚    イ 生産部事業に協力
  ウ 組合運営に助成