昭和二十四年一月十七日、函館市長および函館市亀田村合併調査委員会委員長に対して、亀田側から合併条件について申し入れをしたが、一月三十一日付で左記のような回答があった。
回答(第一次)
合併条件
(1) 行政機構について
○ 亀田町北浜町合併地区を含む地に支所を設置されたい。
答 合併区域は戸数一、四一一戸の小面積で、既存の分室と同様であり、これに亀田町北浜町を包含するものとしても戸数二、五七〇余戸に過ぎず、支所にすればかえって住民の不便になる地域もできるので、分室として事務を処理することにしたい。
○ (口頭要求)職員十人を引継ぐこと。
答 次の条件を了承するならば承認できる。
(ア) 年齢五十五歳以上の者については行政整理を予め了承されたい。
(イ) 引継すべき人名については、当市課長と協議せられたい。
(ウ) 六人以内が適当と思うが、やむを得なければ十人でも差支えない。
○ 法令の許す限り消防委員、民生委員の残任期間を認められたい。
答 希望のとおり了承する。
○ 現村議会議員は残任期間中、地区の行政につき諮問機関に参与せしめられたい。
答 自治法第七十四条の専門委員にそれぞれ選任し、希望の意見を議会に反映するよう措置したい。
(2) 教育施設について
○ 引継教員に対しては本人の意志を尊重して身分の確立を期すること。
答 了承した。
○ 教育施設は現況を以て引継ぐが、新年度開始と同時に教育の完全な受入を完了すること。
答 申込の通り善処する。
○ 昭和二十四年度に於て港分校に少くとも七教室を増築して引継児童の完全収容を図ること。
答 二十四年には出来ないが、二十五年度内に完成する。なおその間貴村で御世話になる児童に対しては、応分の費用を負担する。
○ 明年度において港寮の児童を合せ一千百余人となるが、前項の増築完成までは港寮の児童は従来通り措置すること。但し港寮の児童を港分校に収容するときは、更に七教室を同時に増築すること。
答 前項に引続き二十六年度迄に完成する。
○ 同地域の児童を分散通学させることは、教育上好ましくないので、三十教室の編成必至の現状に照し、新築計画を進めること。この新築が実現したときは、現分校校舎を公民館として借用させること。
答 了承する。
○ 教育施設は如何なる事情下にあっても、現状より低下させないこと。
答 教育の重要性から考えて当然の要求であるから、十分留意する。
○ 昭和二十四年度において、亀田村が施策計画中の、次の事項は、これを市に於て誠意を以てその実現に努力すること。
(ア) 教室前記の増築
答 前記に同じ。
(イ) 屋内運動場一棟増築
答 市内にある昨年度より新築中の諸校舎には、市の財政事情から屋内運動場を付属させていないので、この要求の実現はむずかしいが、市内区域とは全然差別を設けず同一に取扱うことを了承されたい。
(ウ) 屋外運動場拡張
答 敷地買収等の関係もあるので、即答はむずかしいが、できるだけ実現に努力する。
(エ) 教員住宅相当数の建設
答 市内各学校の教員住宅も極度に払底している現状であるが、合併区域は地域的に見て、一層必要を認めるので特に善処したい。
○ 教育条件を完全に取決めるものとし、条件緩和はこれを排除する。
答 教育条件を緩和する意志は毛頭ないが、前各号の説明により、綜合的に了承せられたい。
(3) 消防施設について
○ 火災報知機所要数の新設
答 市内亀田終点以東には、現在火災報知機の施設がないので、合併区域へこれを延長するとすれば、機械十機、架線八・五キロメートル、その経費三〇万二、五〇〇円を必要とするが、財政を勘案して善処したい。
○ 消火栓の敷地延長
答 五百メートルを延長し、その間地上式消火栓八か所を設置したい。
(4) 土木交通施設について
○ 船入澗設置を要望すると共に鉄道桟橋以西の海浜に仮桟橋の敷設を急速に実現せられたい。
答 船入澗の築設については地域及び地質の関係上十分の調査研究を要するので、即答できぬが、仮桟橋の敷設については亀田村字港二〇四番地先、繋船用桟橋を改修するものとして、その予算一〇〇万円、又木造を以て新設する場合は一八〇万円を要するので、急速の実現はむずかしいが善処したい。
○ 合併地域に水道共用栓八か所以上を設置せられたい。
答 共用栓の設置は法律の定めるところによって、貧困者を対象とする関係上、本地域は一か所の設置を適当と認めるが、実情調査の上、三か所まで設置する。なお専用栓設置の希望者に対しては特に工事費十か月の月賦払を認める。
○ 日産化学より鉄道踏切間の道路を改修すること。
答 本市調査による該道路改修予算は九二六万一、二〇〇円の多額を要するので、新年度中にこれを完成することは市財政困難の折柄至難と考えるが、近い将来に於て解決したい。
○ 有川通より五稜郭駅に至る道路を新設すること。
答 本市調査による該道新設予算は四、七九四万五千円の多額を要するので、新年度中にこれを完成することは至難であるが、近い将来に於て解決したい。
○ 市営バス路線を次のように延長すること。
(ア) 札幌街道桔梗まで
答 市が現在営業中の函館駅・五稜郭駅間バス路線を、省線桔梗駅まで延長するものであるが、この路線は現在同業の函館乗合自動車株式会社が営業の特許を受けているので、市が新たに路線免許の出願をするにしても、監督官庁たる道路運送監理事務所及び査問機関である北海道道路運送委員会の意嚮(こう)が、同一経路の路線を異にする経営者に営業を許可することは競争営業の形となり、双方に不利であるから、新規出願は認めぬとのことであるが、市は極力これが打開に努力中である。
(イ) 有川通高等水産学校まで
答 前項同様である。
(5) 勧業施設について
○ 農地改革は同法の事務終了するまで亀田村農地委員会で行うこと。
答 合併後は市内となるため、市農地委員会にその事務が移るものと考えるが、農地調整法第十五条、同施行令第十四条、第十五条によれば、可能のようにも考えられるので、なお研究する。
○ 配給所の組替えをせられたい。
(商業組合、配給店、統制組合以外のものは亀田村商業協同組合が取扱うこと)
答 統制物資については亀田村商業協同組合で取扱うことはできないが、個人名義で登録店の許可を受けた場合は差支えない。また一般物資の取扱については要望通りにする。
(6) 厚生施設について
○ 市立函館病院診療出張所を開設すること。
答 特別会計である函館病院の経営は相当困難な財政事情にあるから、概算一二五万五、五〇〇円余を一時に支出することは容易でない。従って急速実現はむずかしい。
(7) 総括条件
○ 分村地域の公共施設の見返りとして代償を考慮せられたい。
答 市村の合併は相互住民の福祉を増進するためであり、編入区域については十分優遇する考えであるから、御了承願いたい。
2 第二次協議書とその回答
二月三日、亀田側よりの第二次協議書について、二月七日付で函館側より次のような回答があった。
(1) 行政機構について
○ 支所の設置については、当初要求通り実行せられたい。尚合併地区に分室を設置することについては、市内の分室設置要領と同一の措置を講ずること。
答 分室を設置する。分室に於ける取扱事務の具体的内容は次の通りであるが、戸籍事務については、法令の許す範囲内に於て取扱うことにする。
(ア) 市と市民相互間に於て発送又は提出される文書、書類などについては、分室に於てこれが連絡にあたり、戸籍事務についても原簿と対照する必要のないものについては出来るだけ分室で処理し、なお市に於て実施する各種行事は新聞回覧板によるほか分室に於ても周知徹底を期し市民の利便を図る。
(イ) 人口調査、事業所統計調査、学齢児童調査などの国で行うものや、定期的に実施される諸調査については、分室で一切の事務を処理する。
(ウ) 物資の配給事務については、妊産婦に対する特配など特殊なものを除いては、全て分室で取扱い、本庁まで出向く労を省く。
(エ) 転出証明、現住証明その他軽易な証明はすべて分室で取扱う。
(2) 教育施設について
○ 七教室の建築は昭和二十四年度において必ず実行せられたい。尚建築までの間における生徒児童の収容は、市の責任において処理すること。
答 合併による児童の受入については三十教室編成の港小学校(仮称)完成を目途とし、急速にこれが実現を期するが、新年度の受入暫定措置は次のように講ずる。
(ア) 現在の港分校を「港小学校」の本校として、現行分校区一年から六年生までの五百十二名と現在の亀田本校区一年から四年まで二百十五名合計七百二十七名を十二学級に編成し、三年までは二部授業を実施する。
(イ) 現在の港寮分教場を「港小学校港寮分教場」として港寮在住の一、二年生百五十四名を四学級に編入し、全部二部授業を実施する。
(ウ) 万年橋小学校に「港小学校万年橋分校」を置き、現在の亀田本校区五、六年七十四名と港寮在住児童(万年橋小学校に通学のもの)三年から六年まで二百三名合計二百七十七名六学級を収容し、四年までは二部授業とする。
(エ) 港小学校は総計千百五十八名の二十二学級を収容することになり、三十教室の校舎完成の暁は、普通二十四、特別教室六として使用する。
答 本年六月完成予定である大川中学校第二期工事の二十五教室が完成するまでは次のように措置する。
(ア) 合併地区の二百七十五名と従来の大川中学校区千四十四名合計千三百十九名を二十五学級に編成する。
(イ) 本校に十四学級、万年橋分校に五学級、川原分校(道立工業高等学校内)に六学級を配置する。
(ウ) 本校及び分校の学級編成は教育上、通学上の観点から、学校長に於て適宜決する。
答 三十学級の新校舎の建設については、急速実現を期し、その建設年度計画を次の通りとする。
予算総額 三四、〇五〇、〇〇〇円
(但し三十学級新設計画予算)
[新校舎建設年度計画]
(3) 土木交通施設について
○ 仮桟橋の敷設は本年七月漁期までに回答予算を以て必ず実現せられたい。
○ 日産化学より鉄道踏切間及び有川通りより五稜郭駅間に至る道路の改修又は新設は、回答予算を以て実施しようとする事業の年次計画書を回示せられたい。尚この年次計画中には昭和二十四年度を第一期として、少なくとも本年内に前者に対し緊急補修を実行せられたい。
○ 市営バス路線の延長は、当初に申入れた通り積極的に支障を排除して、急速解決を講ぜられたい。
答 (なし)
(4) 仮桟橋について
○ 仮桟橋の敷設については、道港湾課の許可を得て、地元民の意志を反映した設計を樹て、急速に実施する。
○ 日産化学より鉄道踏切間の道路改修の具体的計画は次の通りである。
予算総額 九、二六一、二〇〇円
(但し延長二、二〇〇メートル 道路幅員一〇メートル 割栗石基礎碎石道幅六メートル)
[日産化学より鉄道踏切間の道路改修計画]
なおこの道路は昭和二十四年度都市生産再建整備事業として、目下申請中であって、認可あり次第着工する予定であるが、もし認可のなかった場合は、応急工事を実施する予定である。
○ 有川通より五稜郭駅に至る道路新設の具体的方法は次の通りである。
予算総額 四七、九四五、〇〇〇円
(但し延長一、一〇〇メートル 道路幅員一八メートル 割栗石基礎
砕石 道幅一〇メートル)
跨線橋延長五〇メートル 取付道路五十メートル
[有川通より五稜郭駅に至る道路新設方法]
(5) 総括条件について
○ 総括条件については、合併地区住民を優遇するという貴市の誠意を確信して了承する。よって学校その他この第二次申入条項については、全面的に承認して、その実現を確約せられたい。
答 (なし)
3 第三次協議書に対する回答
第二次回答について、市村合併特別委員会において協議検討の上、二月十日第三次申し入れを行った。それに対し左記のとおりの回答があった。
(1) 教育施設について
○ 三十教室の建築年度計画中、次のように更正せられたい。
(ア) 敷地整地費は昭和二十四年度、昭和二十五年度に施行するよう年次を繰上げること。
(イ) 校舎建築費の内、資材買入費相当額を昭和二十四年度に計上すること。
答 三十教室の校舎建築については左記の通りとする。
予算総額 三四、〇五〇、〇〇〇円
[第三次協議書に対する回答]
(2) 土木交通施設について
○ 市営バスの運行について
市営バスの運行については、関係機関の意向と平行線の許可至難などの面から、努力中との第一次回答であるが、次のよう解決の方途を講ぜられたい。
(ア) 函館駅、五稜郭駅間の路線を変更して、亀田電停五稜郭駅及び高水間に運行すること。
(イ) 路線の変更手続については、関係機関に対する強力な運動により、打開の途は容易であると思われるから、急速実現に邁進せられたい。
答 市営バスの運行については、交通機関としての本旨からも当然であり、実施の急速を期するため監督官庁の許可を得ることに努力する。
4 村議会における審議検討
昭和二十四年二月十四日、第一回臨時村議会を開き、市村合併特別委員長木戸浦一二より「市村合併について」の第三次の回答書の報告があり、了承することになった。これにより「市村合併協議書」の作製が行われ、次のように決定した。