狭い海岸低地と汐泊川沖積地

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 海岸低地は、海食崖であった台地下の崖錐(崖から落ちた堆積物の高まり)あるいは小河川の河口州からなり、面積的にはきわめて狭い。昭和三十一(一九五六)年発行の銭亀沢村『村勢要覧』の表紙写真には、まだ未整備の道路とともに、黒岩岬から新湊町方面にむけて海岸沿いに並ぶ集落の立地がよく示されている。海岸低地にあっては国道二七八号線の道路、護岸堤防、あるいは港湾施設が占める部分がいかにも大きく、各集落の家屋が位置するのは、それらの施設と背後の台地崖との間の僅かな空間である場合が多い。小河川の河口付近には、少しまとまった家屋が建つ。ただし、どの場所にしても大雨の際には、崖崩れや、河川出水、高波の危険があり、注意が必要である。汐川の河口にある古川町の家並みの多くは、他と異なり標高三、四メートルの砂州の上にある。
 銭亀沢の低地としては、もう一つ汐川の沖積低地がある。ここも、大正四(一九一五)年の地形図によれば、水田は上流の亀尾近辺に限られており、銭亀沢地内の水田は、豊原、古川のごく一部に過ぎない。河口付近や谷底平野の湿地、また蛇行河道跡など、当時の汐川は自然のままの状態を色濃く止めている。ただし、昭和三十(一九五〇)年頃の地図では、かなり水田化が進んだ様子が伺える。