泥炭層から五センチ間隔で採取した四層準の試料についての花粉分析結果は、いずれも同じような花粉の出現傾向を示した。針葉樹のトウヒ属(エゾマツなど)が全体の六〇パーセント以上を占め、次に同じく針葉樹のモミ属(トドマツなど)が全体の二〇パーセント弱を占めた。この他、マツ属(ハイマツなど)が一定の割合を示し、カラマツ属(グイマツなど)も中位の層準に数パーセント程度出現する。落葉広葉樹類の出現率は低い。
このように、針葉樹林中心でトウヒ属を主とし、モミ属やマツ属を伴い、ときにカラマツ属も自生する植生は、亜寒帯から寒帯のそれを示すもので、これが今から四万年を少し遡ったころの銭亀沢の環境であったらしい。
図2・1・10 豊原町および戸井町小安における銭亀沢火砕流堆積物直下、同堆積物上の花粉化石ダイアグラム(紀藤ほか、1993より編集)