岩盤の高所にはヒジキ、エゾヤハズ、スサビノリ、フクロフノリなどの海藻が成育する。このような高所では潮時や季節による環境変化が著しい。干潮時になると夏は強い日射による乾燥、冬は寒気による凍結の危険にさらされ、満潮時になると激しい波浪に翻弄される。しかし、このような厳しい環境にウニなどの食植動物はなかなか侵入できず、海藻類にとっては捕食から免れる。そのため、平磯の高所には厳しい環境に耐える特定の海藻だけが成育する。
一方、平磯の窪地には干潮時に「潮だまり」が形成される。このような場所は乾燥から免れるものの、食植動物にとっても恰好なすみかとなり、海藻類は捕食の危険にさらされる。そのため、どの海藻類も動物の捕食に対抗するための多様な戦略をもつ。たとえばコンブ類は被食量より成長速度の方が大きく、アオサ類は年に数回繁殖する。ウルシグサ類は細胞に毒を蓄え、またサンゴモ類は植食動物の歯に耐える堅い体で武装している。
このような平磯では、場所による微妙な環境の違いに合わせて海藻が住みつくので、みごとな「住み分け」が起こり、同種の海藻がパッチ状あるいはベルト状の群落を形成する。
さらに、海底地形図(図2・3・1参照)をみると、汐泊川周辺の海岸部には川から流出した土砂が堆積したと思われる砂浜が発達している。このような場所では海藻類はほとんど成育できず、わずかにアマモなどの海産顕花植物が成育する。ここでは海岸から沖合まで砂底が続いているように思われがちだが、沖合には岩盤地帯があり、比較的浅い場所は大型海藻が密生する「昆布根」となっている。このような場所が従来から「中間コンブ」や「沖コンブ」の漁場となっている。ここにはマコンブ、チガイソなど深い場所を好む海藻類が成育しているが、種類は平磯に比べて多くない。さらに沖合の岩盤とその周辺には、直径二〇から三〇センチメートル程度の平らな石が散在し、これにも大型で幅広のコンブが付着している。
図2・3・1 銭亀沢付近の海底地形図