銭亀沢の動物相についての直接的な調査はないが、津軽海峡北岸近郊海域における研究を年代の古い順にあげる。稲村(1956)は函館湾内の魚類相として、函館山裏の寒川および函館湾北部の上磯町茂辺地の主に建網で漁獲された魚類について七一種を記載している。
また、北海道学芸大学函館分校(現北海道教育大学函館校)の生物教育尻岸内臨海実験所(昭和四十六年木古内に移設)では、総合的な生物相調査をおこなっている。軟体動物相については波部(1960・1961)が二枚貝綱で二一科三六種、巻貝綱二〇科三五種を記載している。魚類相については小林・池田(1962)が近郊海域で漁獲された四七科八〇種を記載し、その後これに吉岡(1967)が五科八種を追加している。
また、北海道教育大学木古内臨海実験所において海産無脊椎動物相についての詳細な調査がおこなわれており、大野(1976)および棟方(1982)は無脊椎動物全般について、特に馬渡ら(1985・1988)は軟体動物五八科八八属一一一種を、節足動物・甲殻綱二二科三二属四〇種を、腔腸動物一〇科一六属一八種を、触手動物六科八属八種、合計一七七種を記載している。
銭亀沢は暖流と寒流の混合海域に面するという世界的にも稀な海洋環境にあることから、極めて多様な動物種が見いだされているものと考えられる。地理的に銭亀沢は尻岸内と函館湾および木古内の間にあり、少なくともこれらの調査による記載種の大部分がそのまま分布しているのであろう。