銭亀沢の自然環境についてまとめられた過去の資料はほとんどないに等しい。強いてあげるとすれば、昭和五十六(一九八一)年に運輸省から発表された函館空港建設にともない調査された『空港拡張整備事業に係る環境影響評価書』と『現存植生図五万分の一(五稜郭)』(環境庁 一九八四)である。
このような事情の下で、銭亀沢地域においてアシ原を休息地とする渡り鳥の移動状況を把握するため、昭和五十八(一九八三)年から平成三(一九九一)年までと平成七(一九九五)年にそれぞれ当地域内の古川町と豊原町で鳥類標識調査をおこなった。この節では、この調査で得られた知見に基づき、鳥類相の変化を通して、銭亀沢に生息する鳥類が、どのような生息環境に影響されているかを検討し、函館山などとの比較をしながら銭亀沢の現在の自然の状況について述べたい。