このうち水鳥では、ウ科ウミウなど二種、サギ科のアマサギなど三種、ガンカモ科コクガンなど九種、クイナ科のクイナ、チドリ科のコチドリ、シギ科のアカアシシギなど五種、カモメ科のユリカモメなど八種、カワセミ科のヤマセミなど二種の八科三一種である。これらの鳥のほとんどが海岸や河川の環境に依存していることはいうまでもないが、サギ科やシギチドリ類は水のある休耕田などにも姿を見せる。また、クイナは、アシ原の生育する湿地内にその生活を依存している。
スズメ目以外の陸鳥としては、ワシタカ科のトビなど七種、ハヤブサ科のハヤブサなど二種、キジ科のキジ(北海道に生息しているのはコウライキジ)、アマツバメ科のアマツバメ、キツツキ科のアリスイなど、四種の五科一五種であった。コウライキジは草原やアシ原で生息する。
スズメ目については、ヒバリ科のヒバリ、ツバメ科のツバメなど二種、セキレイ科のハクセキレイなど二種、モズ科のアカモズ、ヒタキ科のイソヒヨドリ、アトリ科のイカル、ハタオリドリ科のスズメ、ムクドリ科のコムクドリなど二種、カラス科のカケスなど三種の九科一五種であった。広葉樹を主体とした森林が少ないため、ヒタキ科は少ない。
次に、代表的種と特筆すべき種について取り上げる。
アマサギ・ダイサギは、北海道にはかつて生息していなかった種類であるが、道南地方での目撃情報が最近多くなった。当地での記録は渡りの途中と思われる。
コクガンは、越冬のために渡来する。昭和四十六(一九七一)年に国の天然記念物に指定されている。渡島半島の津軽海峡よりが主な越冬地であり、志海苔町の海岸に毎年数十羽が群れる。昭和五十年代半ばまで、上磯町の茂辺地海岸の磯にその群のほとんどが集まっていたが、昭和六十(一九八五)年以降この付近での海苔の養殖が終了するにともない、津軽海峡に面した海岸に広く分散するようになった。志海苔町における個体数の増加はこの頃から始まるようである。
シマアジは、日本において旅鳥として春と秋の渡りの時期に見られることが多いが、当地においては珍しい。シノリガモは名前のとおり、志海苔に由来したような鳥の名のようだが、関連については不明。山地のダム湖などで時折繁殖するが、主に冬鳥として渡来する。コオリガモは、越冬のために、主に北日本沿岸部に渡来するが道南には少ない。オオタカは、古川町にて保護された例がある。当地に生息するキジはコウライキジで、狩猟のため持ち込まれたものである。日本の国鳥であるニホンキジは北海道には生息していない。
クイナは、当地で、過去にヒナが保護された例がある。コチドリは、海岸の浜や河口付近に夏鳥として渡来する。当地でも繁殖していると思われる。海岸の減少はこの鳥の減少をもたらす。アカアシシギは、当地では渡りの時期に河口や水田などに渡来する。セイタカシギは、迷鳥と呼ばれていたが函館市内において最近はよく観察されるようになった。当地では、銭亀町の海岸で観察されている。
ワシカモメは、冬鳥として北海道の太平洋側に渡来するが、多くはない。当地においても、越冬するが少ない。シロカモメは、冬鳥として北海道や本州北部に渡来するが少ない。当地においても、越冬するが少ない。アオバトは、海岸に出て海水を飲むことで知られる。当地においては、春と秋の渡りの時期に見られる。
カッコウ・ツツドリ・ホトトギスは、いずれもホトトギス類で体型や色彩が似ている。その名の由来が鳴き声からきている托卵鳥である。
ヤマセミ・カワセミは、カワセミ科で河川にて繁殖しているが、護岸工事がこの種の生息域を脅かす。アリスイは、当地には渡り途中に林やアシ原に立ち寄る。首をヘビのようにくねくねとねじ曲げるおもしろい鳥。アカモズは、日本には夏鳥として全国に渡来する。当地にも渡来するが稀である。
表2・4・3 鳥類標識調査以外で記録された鳥類のリスト
凡例:渡り類別 R:留鳥 S:夏鳥 W:冬鳥 T:旅鳥 ?:不確実 ※全長(体を伸ばしたときの嘴の先から尾の先までの長さ)は大凡の数値