約11万年前頃から気候の寒冷化が徐々に進行し、降った雪が氷河として陸上に固定されたことから海水面の低下が始まった。最終氷河期の始まりである。寒冷化が進んだ約7万年前頃には北海道とサハリンの間にある水深約60メートルの宗谷海峡が陸化し、北海道は約1万3千年前までの間、サハリンとともに大陸にぶら下がった半島となった。北海道の各所はエゾマツ、アカエゾマツ、グイマツなどの亜寒帯性針葉樹でおおわれるとともに、大陸からは宗谷陸橋をとおってマンモス象で代表されるマンモス動物群が南下してきた。
北海道ではこれまでに9個のマンモス象臼歯化石が段丘堆積物中や海底から発見されている。化石産出地点の地層の年代、上下の地層中に堆積した火山灰の年代、化石そのものの放射性炭素年代から、今までに北海道で発見されたマンモス象化石の年代は約6万年前から約4万年前のものであったことが明らかになっている(山田ほか、1996)。
これまで北海道で数多く発見された旧石器の遺跡のほとんどが、約2万1千年前よりも新しい後期旧石器文化に属するもので、大陸からマンモス象を追ったマンモスハンターが南下してきたかは不明であった。しかし、1998年春に空知管内新十津川町総進の高位段丘に位置した不動坂遺跡の赤色風化土中から、約5万年前の中期旧石器時代の斜軸尖頭器とよばれる石器など4点が発見された。今のところ遺跡の性格は不明だが、斜軸尖頭器を使用した人々がマンモスハンターであった可能性がある。