<押野鉱山>
鉱山を構成している岩石は主として安山岩であり、硫黄の鉱床は集塊岩中に存在する。鉱床と上磐の集塊岩の層の間には一般に粘土層が見られる。硫黄の鉱脈は、北北西から南南東へ20度の角度で走り、東方に15~20度ところによっては30度ほど傾斜している。鉱層は厚いところで6~9メートルもあるが、薄いところで1.5~1.8メートルにしか過ぎず一定ではない。鉱石は粘土質を含み、暗灰色・灰色若しくは灰黄色で、縞状の構造を持ち剥離する性質がある。
本鉱山には現在(明治44年調査報告)露頭掘、2・3・4番の坑道が掘られ採掘をしている。それぞれの坑道の延長は、2番59メートル、3番336メートル、4番624メートルにも達している。鉱石の産出可能量は、最下部の4番の中坑道から東方に130度掘削するとして計算すると、残量およそ369,000トンとなる。
鉱石の品位は次の通りである。(数値は硫黄分の%)
(採集箇所) (上 鉱) (中 鉱) (セシウム)
露頭掘 64.36 …… 痕 跡
2番坑 81.30 64.52 同
3番坑 74.53 …… ……
4番坑 59.94 58.64 ……
鉱石の平均硫黄含有率は50%を超しているが、その歩留まり(精煉される硫黄分は)4割にしか過ぎない。搬出してきた鉱石の3割は棄石となるため、実質、精煉に供する鉱石は全鉱石量の7割となり、したがって、生産される硫黄製品は全鉱石量比、2割8分程である。なお、精煉された製品は硫黄は96.97%を含んでいる。
本鉱山の通称石橋沢というところには、輝石安山岩中に3条の硫黄鉱が確認されている。鉱脈は北30度西に走り直立する。その3条のうち中央の最も広い露頭は鍵幅3.6メートル程あり目下探索中である。なお、硫黄の含有率は26.75%程度であり、前記鉱石に比べ著しく劣る。
<古武井硫黄山(山縣)>
鉱床は全く押野鉱山の連続で、その上部に該当する。層向は北10~20度で東方20~25度傾斜している。これを観れば、押野・古武井両鉱山を通す鉱床は上部で東に向かい湾曲した窪みを持っていると推察できる。
本鉱山で目下採掘している箇所は、露頭掘・新坑・大切坑・2番坑等である。
これらの箇所の鉱石の品位は次の通りである。(数値は硫黄分の%)
(採集箇所) (上 鉱) (中 鉱) (セシウム)
露頭掘 75.71 …… ……
新 坑 79.22 46.81 ……
大切坑 75.20 …… ……
鉱石の平均歩留まり(精煉される硫黄分)は、塊鉱でおよそ4割5分、粉鉱で3割分であり、坑内より搬出する鉱石より精製される硫黄は、2割4分程度である。
なお、精煉された製品は硫黄は96.84%の純度である。