明治13年(1880)、村に公立学校設立以来70余年、勅令、省令、告示にもとづき、あるいは上級官庁の指示指令・指導により教育行政を行ってきたが、教育新法により「学校の施設設備、教職員人事、教育内容、社会教育等、村の教育事務に関する広範な権限をもち法規に従い自主的に処理できる」と、生まれたばかりの教育委員会に山積した事務が預けられた。
教育目標と教育方針 昭和27年(1952)、発足したばかりの教育委員会は、まず、村の「教育是」ともいうべき、教育目標・学校教育方針・社会教育方針に着手・設定した。
『尻岸内村教育目標』
平和的な文化国家の形成者を育成するために、尻岸内村の教育目標を次の通り定める。
一(社会と郷土)自主協同の精神を重んじ明るい郷土社会の発展を通じ、国家社会の建設に貢献する。
二(道義と情操)道義を昂揚し、豊かな情操と敬虔な精神を涵養する。
三(生活と文化)生活の科学化を図り進んで新しい文化を創造する。
四(生産と職業)職業の知識技能を習得し、もって産業の開発と生産の増強を図る。
五(健康と勤労)明朗にして強健な心身を練成し、喜びを持って勤労する。
「学校教育方針」
○学校経営の合理化
一 教職員の厳正な服務と相互の協力により学校経営の効果を上げる。
二 学校および学校経営案を樹立し、重点的な経営にあたる。
三 施設の充実計画を推進し、特に災害防止に万全の対策をたてる。
四 学校行事を精選し、運営の適正化を図る。
○教育課程の自主編成
一 地域社会、学校の実態に即して教育課程の改善充実を図る。
二 教育課程の指導内容を研究し、小・中学校の関連に留意する。
三 教育課程の改善に伴う施設設備の充実に努める。
○学習指導の充実
一 自律的協同学習態度の徹底をはかり、学業不振児の指導を重視する。
二 科学技術教育を振興し、科学的能力・態度の育成に努める。
三 学校図書館並びに視聴覚教育の計画的活用をはかる。
「社会教育方針」
一(愛郷心の啓発と産業振興)郷土の自然環境、経済事情、産業構成、文化施策・行政形態等に対する認識を深め、愛郷心を啓発するともに産業の開発と振興に協力して、豊かな村を建設する。
二(新生活の建設と環境の向上)不断の創意工夫と旺盛な実行力により、生活の民主化と合理化を図り、生活環境を刷新向上して、住みよい村を建設する。
三(教養の向上と文化活動の強化)一般教養を向上し、文化活動を強化し、正しいレクリエーションの普及、体育の振興により、明るく健康的な村を建設する。
四(家庭教育と道義の昂揚)家庭教育の振興、社会訓練の徹底と宗教精神の涵養により道義の昂揚を図って、清らかな村を建設する。
五(社会教育団体の強化と人材育成)社会教育団体の結集強化を助成し、中堅となる人材を養成し活気ある村を建設する。
推察するに、この教育目標と方針の設定についても、苦労と戸惑いがあったと思われる。ただ、「教育委員会が所管の事務を法規に従い自主的に処理できることはいうまでもないが、又、道教育委員会は村教育委員会に対して、必要な指導、助言、援助を行う」と法規に記されているし「各教育委員会は相互に協力すべきものとされている」とあるところから、村内の校長会との話し合いは勿論、他教育委員会との情報交換や道教委(渡島地方教育事務所)・文部省からの指導資料等、参考にし設定したものと推察する。
最初のことでもあり、社会教育方針については盛り沢山であり表現も固い感じがする。