一、歴史関係の項に引用した古文献の文章は、原著の意味を害(そこ)ねない程度に現代文に意訳して掲載した。但し短文であまり難解でなく、原文のまま挿入したほうが適当だと判断した文章の若干のものは、原文のまま採録した。又菅江真澄(すがえますみ)や松浦武四郎などの書いた日記、紀行文は、当時の状態を知ることのできる誠に詳細で貴重な文献であるので、戸井の分だけでなく、下海岸や蔭海岸の分も採録した。
二、本文は教科書体の活字を使用し、古文献よりの引用文は殆んど明朝体の活字を使用することにした。
三、町史年表は各時代毎に、その時代の概観を附し、事蹟を列記したが、本文の内容は必ずしも時代区分に捉(とら)われず、殆んど項目別に記述した。
四、巻末に参考文献を掲げたが、これは歴史、地誌関係の分野の文献に限り、そのうちでも戸井町及び近隣町村の事項を記述したものに限り、他の分野の文献については、すべて省略した。即ち道南の歴史を調べる上に必読すべき文献のみを掲げた。
五、戸井の植物誌、鳥類誌、海産動植物誌、方言誌などは、山野を歩き廻り、地域のいろいろな人に聞き、参考文献や図鑑によって調べて書いたもので、最も苦労したものの一つであるが、研究不十分で、未完のものというべきものだが、戸井を知る資料として敢えて掲載した。その道の篤学者叱正を期待している。
六、戸井町史編纂の過程で、歴史的にも文化的にも戸井は津軽海峡を隔てた対岸下北地方と関連が深いことを知り、巻末に「下北地方の景勝地と伝説」を採録した。戸井の古い歴史を調べるには、南部と称されていた下北地方の歴史を調べる必要がある。戸井には昔、下北地方から移住した人々の子孫が多く、人情、風俗、習慣、年中行事、言語など、下北地方と共通なものが多い。年表にも下北地方の事蹟を若干挿入した。(編集者)