十八、日浦トンネル入口付近の土砂崩れ(昭和四十七年)

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 昭和四十七年六月二十二日午後四時頃、工事中の日浦トンネル原木側入り口附近が土砂崩れを起し、国道二七八号線を一八〇メートルにわたって埋め尽し、その間の交通が途絶した。
 土砂崩れというよりも、海岸に迫っている山の上部の地層が、木の生えたまま海岸に向って移動したというような状態であった。
 函館開発建設部の現地調査では、土砂の量は約二十万立方メートル、八トン積の大型ダンプで約五万台と推定され、完全復旧には最低三ヶ月はかかると発表した。したがって秋に開通予定の日浦トンネルも予定より大巾に遅れる見通しである。
 この大災害の原因は、降雨のためであることは明らかだが、以前これ以上の豪雨でもこのようなことがなかったことから、誘因はトンネル工事による地磐のゆるみではないかといわれ、トンネル工事の工法、保安方策が萬全であったかどうかが検討されたが、天災か人災か微妙で結論は出ていない。

日浦トンネル入口附近の大崩壊現場

 この大土砂崩れのため、国道二七八号線はここで寸断され、函館から日浦以東、椴法華までのバスは、一時道々蛾眉野(がびの)―唐川(からかわ)線を運行している。
 函館開発建設部は、六月二十五日までに、土砂崩れのあった一八〇メートルの区間に、巾約一メートルの人道を急造し、復旧を急いでいるが、完全復旧はいつになるか見通しはついていない。
 この土砂崩れによる、漁業に及ぼす影響を現地調査した北海道漁業団体公害対策本部では
 
 『○最悪の被害区域は、土砂がなだれ込んだ海面附近五、六ヘクタール。
  ○マコンブ、ガゴメコンブ、チガイソ(サルメン)などの海藻類に与えた損害は約六、八トン。
  ○ウニ、アワビ、タコなど底棲生物に与えた損害は、約五、三トン』と発表した。
 
 この発表で地元漁民の間では、損害補償の問題が論ぜられているが、原因がトンネル工事の工法や保安方策のミスと断定できず、天災か人災かの論争があるだけで、結論は出ていない。
 下海岸に交通運輸、経済上に大きな打撃を与えたこの大災害によって痛感することは、国道二七八号線と道道蛾眉野線を縦に結ぶ道路を開設すべきだということである。即ち原木川沿いと戸井川沿いに上る林道を拡巾整備して蛾眉野線につなぐことである。これは既設の林道を改良することによって容易に実現できることである。
 こうして函館と結べば、距離的に短縮され、今回のような災害時だけでなく、交通運輸、経済上、多大の利益があり、戸井町の発展上、大きな役割を果すことは明らかである。原木川と戸井川との川添いの林道は、大型トラックも通れる程度に整備されており、蛾眉野線に至るまでの間、改良整備を必要とする区間は極めて短距離である。
 国道二七八号線から原木川、戸井川の道路を縦につなぐことが実現すれば、大間―戸井間のフェリーボートに積載される乗用車やトラックがすべてこの道路を利用することができ、戸井や道南の発展に大きな貢献をすることは明らかである。 (昭四七、八、二三記)