[農業と牧畜]

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短角牛の放牧風景

 別表農耕地図でもわかるように、山岳が海岸に迫り、渓谷が深くて平地が少ないため、農耕可能な土地が極めて少なく、小安、釜谷の海岸段丘の上に稍々広い農耕地があるだけで、他の地域は各河川の川口近くに狭い農耕地があるだけである。したがって農作物を売って生活の資にするという状態ではなく、自家用としてのジャガイモその他の蔬菜(そさい)類を耕作しているに過ぎない。

戸井町農耕地図

 昭和三十五年頃から、沿岸漁業の不振対策として、役場の奨励、指導もあり、小安の島本石太郎等が中心となって肉牛の飼育が始められた。
 最初は岩手県下から、自己資金三分の一、借入金三分の二で、短角牛五十頭を導入した。畜産振興組合を結成して増殖に努力した結果、現在では組合員数二十名を越え、飼養頭数は一二三〇頭に達するまでに発展した。
 肉牛の放牧場は汐首地区にあり、その運営は組合員の奉仕活動によって実施しているが、放牧料として年間一頭につき三五〇〇円を支払っている。
 冬期間の飼料としては、人工配合飼料、乾燥牧草、トウキビ、ジャガイモを使用しているが、飼料代の捻出(ねんしゅつ)が一つの問題点となっている。
 肉牛のせり市は、毎年十月頃、大野市で行われここで売り捌かれている。
 放牧場が汐首地区にあるため、組合員は放牧場に近い釜谷地区に多く、小安地区が少ない。組合の運営費として、一人年間一〇〇〇円を醵出している。
 役員は次の通りである。
   組合長   蒲原 幸一
   副組合長  島本 磯治
   会計    関谷  武