昭和二十二年、公選の村長及び村会議員が選出される以前の村行政の実態を知るため、旧制度の村会会議録(抜粋)を記すことにする。
昭和二十二年第一回村会々議録
昭和二十二年二月二十七日第一回椴法華村会ヲ椴法華村役場会議室ニ招集ス
一、應召議員左の如し
三番 中島悦一
四番 瀧潔
五番 北村常吉
九番 香川喜三郎
十二番 五ノ井正二
一、缺席議員左の如シ
八番 中村泰三
十一番 久末善藏
一、會議ノ事件左ノ如シ
一 昭和二十二年度亀田郡椴法華村歳入歳出豫算ノ件。
二 村税條例中改正ノ件。
三 小学校授業料徴収規定中改正ノ件。
四 實業補習学校授業料徴収額ノ件。
五 國民学校授業料徴収額ノ件。
六 一時借入金ノ件。
七 基本財産蓄積停止ノ件。
八 昭和二十一年度亀田郡椴法華村歳入歳出追加更正豫算ノ件。
九 昭和二十一年度村民税賦課額査定ニ関スル議決更正ノ件。
十 有給ノ吏員諸給与條例中改正ノ件。
(中略)
一 代理助役
二月二十七日午前九時三十分椴法華村會ノ開會ヲ宣告ス。
一 町村制第四十六條ニ依リ議事ニ参与スル者左ノ如シ。
代理助役 小畑定夫
椴法華村書記 中里藤雄
一 本會ノ書記左ノ如シ
椴法華村書記 夏原儀之助
(中略)
一 議長、之レヨリ直チニ日程ニ入ル旨ヲ告グ。
日程、第一昭和二十二年度亀田郡椴法華村歳入歳出豫算ノ件。
一 議長、第一號案ヲ議題ニ供シ第一讀會ヲ開クベキ旨ヲ告グ。
一 参与説明
本年度予算ハ例年ト違ヒ近年ニナキ膨大ナル予算ニテ其ノ内容ハ大体物價高ニトモナフモノニテ最近支廳ヨリ予算証認ヲ受ケタル次第ニテ新規事業モ考ヘテ居リタレドモコノ予算ニハ計上致シテ居リマセン、近ク新村長就任ノ際ハ新規事業計画ヲ樹立スル予定デアリマス、コノ予算ハ昨年ヨリ七万圓以上ノ増加トナリ適当ノ財源ヲ見ツケテ計画運営ニ万全ヲ期シタイト思ヒマス以上予算編成ニ對シ一言申上タ次第デ御座イマス。
(中略)
一 九番(九番議員の質問)教育費ハ新年度ノ六・三制ヲ見テノ予算デスカ。
一 参与、コノ予算ハ現在ノ教育費デアツテ新年度ヨリノ六・三制ハ見テ居リマセンガ新年度ヨリ計上シナケレバナラヌト思ヒマス。
昭和二十二年二月二十七日の第一回椴法華村会に上程された昭和二十二年度の歳入歳出予算は、第一回統一地方選挙が実施される前であるため(統一地方選挙は昭和二十二年四月五日実施)新事業に関する金額は計上されていないのにもかかわらず、村会会議録に見られるように『本年度予算は例年ト違ヒ近年ニナキ膨大ナル予算ニテ其ノ内容ハ大体物価高ニトモナウモノニテ』と記されるような有様であった。
一方これに対して納税する側の村民は、長い戦争のために民力は非常に衰ろえており、村民税にあまり期待できるような状態ではなかった。
このような状況下で椴法華村は、新制中学制度の発足に伴う中学校の校舎建築費・教育費の支出・病院・道路・輸送機関等の公共事業への支出・その他引揚者・復員軍人に対する援助費等を、益々激しくなるインフレーションの中で実施して行かなければならなかったのである。