前にも記したように昆布の採取は年を追うごとに盛んになっていったが、これに伴って次第に乱獲の傾向が強まりつつあり、資源の保護政策が必要となった。このため松前藩は昆布の主産地を支配している亀田箱館奉行に対し、元禄四年(一六九一)次のような法令を発し昆布の乱獲を防止しようとしている。
『松前福山諸掟』元禄四年の定
(関係分のみ要約)
[亀田箱館]奉行
一、昆布取場え他国より直に船来候はば、人遣、其船留置、様子早々可二申越一候。若又松前え商売運送の船逢二難風一、其辺之着岸候はば様子聞届、其旨可二申越一候事。
一、昆布時分より早く新昆布商売候義堅令二停止一候。
以上のように定められているが、前者の法令では昆布取場所へ他国の船が渡来したならば、役人を派遣し、その船をその場所に留置き船の様子を直ちに報告しなさい。松前へ商売に来航する途中で難船したのであれば、様子を調査し、松前に報告しなさい。という法令であり、他国船が来て密かに採取することや密かに売買することを防止しようとしていたものである。
後者の法令は、昆布の採取時期以前にいわゆる若生昆布を採ってはいけないと定めているが、これは昆布の濫獲になることを防止するための法令であった。