昭和初期の鰮漁業

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 「昭和九年渡島支庁管内水産業概要」によれば、椴法華村の鰮漁業について次のように記されている。
 
   (鰮・鮪落網漁業)
  統数 二統(元椴法華一ヶ所・椴法華一ヶ所)
  使用船數 起舟二隻(保津船肩巾八尺五寸、長八尋半)、乘込員二隻ニテ二十二、三人、枠船・一隻(起舟ト同一保津船)三、四人乘り、魚見船並二口船・一隻(「モチップ」船巾四尺五寸、長六尋)三人乘、雜用船・一隻(磯舟巾三尺五寸、長五尋)二人乘、以上総員三十二、三人。
  漁期及漁場 漁業時期ハ六月ヨリ十二月一杯ニシテ、元椴法華ハ六月ヨリ十二月末迄、椴法華(ヤジリ濱)ハ九月頃ヨリ十二月末マデトス。漁場ハ元椴法華沖出五百間海深十七尋「ヤジリ」濱ハ二十尋トス。
      鰮ハ六月上旬ヨリ十二月下旬マデニシテ十一月下旬前後ガ盛漁期トス。
  漁具ノ構造 (敷設配置圖ニ依リテ其全形ヲ知ルベシ)
     ●身網ハ胴網部・外登・内登一溜ヨリ成リ、胴網部ハ側網・敷及前垂網ヨリ成リ、溜網部ハ立揚・敷・側網・窓立揚ヲ縫合セ内登及外登ハ各兩側及敷ヨリ成ル。身網ノ周圍二百五十七間、胴張三十五間、外登長二十一間、巾下三十四間上下十四間、内登長十一間、外登付幅十四間、落口六間、溜網長四十間、上「スド」八間、前巾二十二間トス。手網ハ長四百間トス。
     ●溜リ立揚網、七ミリ「トワイン」八節五十掛、長十五間切十二反縫合縱目トス。但鮪ナレバ十ミリ二寸目ヲ入ル。
     ●溜リ側網、綿糸十五號二寸目五十掛、十四間切四反合之ヲ棚十間トス。(外四割縮結)之ヲ四車トシ左右同一ノモノヲ入ル。
     ●溜リ敷、奥十五號綿糸五十掛、長十四間ノモノ七反合一車、次ハ二十號綿糸三寸目、長十四間切六反合ノモノ三車、以上四車外四割縮結ヲ入レ各十間トス
      窓立揚ハ窓下兩袖ヨリ成リ綿糸十五號二寸目五十掛ノ網地ヲ外四割ノ縮結ヲ以テ縫合スルコト左ノ如シ
      兩袖ハ同網長十五間切ノモノ二反八分約三反合、窓下ハ同網長五間切ノモノ十反合トス。其二外四割ノ縮結ヲ入レテ兩袖肩四間窓下肩十四間トス。
      内登網(漏斗網)ハ両側ハ「トハイン」七「ミリ」三寸五分目五十掛四反三分合トシ、前丈十四間後丈七間半トナル様切ル。
      内登敷ハ中央ニ長十五間切三反合ノ外兩側縁ニ同長一反七分合ノモノヲ半々丁ニ切リタルモノ左右ニ合ス。
      外登兩側網ハ同一網地九反合前丈二十六間ニ後丈十四間ニナル様切リ落シ縫合ス。
      外登敷ハ同一網長三十間切ノモノ中央五反、左右各五反合ニシテ之ヲ半々丁ニ切リ落ス。
      胴網側ハ「コイルヤン」径八厘六寸目五十掛ノモノ四反合横目トシ内三割縮結ヲ入レテ全周ニ入レル(十間切トシテ使用一反ヲ七間トス)
      胴網敷ハ「カニ」(徑二分五厘)ヲ二尺目二十五掛(巾十間)四反合ヲ前巾トナシ奥ハ約二反ニナル様(十間切トシテ一反ヲ七間トス)ニナス。
      前垂網切落式ニシテ、「ガニ」繩二尺目立目ヲ使用ス。
      左圖ノ如シ
      縁網「トワイン」七「ミリ」六寸目三目ヲ取リ胴網及溜網肩ニ入ル手網「カニ」縄三尺目三十掛長二十間切リノモノヲ外二割ノ縮結ヲ入レテ縦目二十トス。足繩ハ藁徑六分位ノモノヲ入ル
      「ダンブ」ハ椴又ハ杉製ニシテ役「ダンブ」ハ三孔長九尺、徑尺四、五寸ニシテ前口ノ兩角及突ニ使用ス。側ノ「ダンブ」ハ三孔長六尺、巾厚一尺及一尺一寸位椴材トス、根「ダンブ」ハ二孔長六尺徑一尺三寸位椴材トス。側ハ「ダンブ」ヲ一間置キニ配置シ之レニ上網ヲ取リ長十五尋位トシ一個所ニ集結シテ之レニ根「ダンブ」ヲ附シ、更ニ根綱一本ヲ繫グ側「ダンブ」ノ間ニ全部ニテ硝子球徑一尺二寸ノモノ五十個ヲ所々ニ入レル。開キ上網ハ中心ニ三分徑「ワイヤ」ヲ入レ其上ヲ中間繩二本三打トシテ打チ込ム。其外径一寸二分位トナル、之ヲ十五間取ル。
      側綱ハ中心ニ四分徑「ワイヤ」ヲ入レ其外ヲ中間繩三本三打トス、外徑凡一寸五分位。
      根綱ハ中心ニ徑三分五厘ノ「ワイヤ」ヲ入レ中間繩三本三打長二十一尋トス。
      土俵ハ小石ヲ入レ一俵凡七十貫トス、側ニハ根綱一本ニ付各八俵宛、突ハ十六俵宛、口前役「ダンブ」ノ根綱ニハ各十俵宛。
      手綱「サカサ」ハ三俵宛。
      「サカサ」綱ハ「ロップ」徑六分長海深ニ達スル丈トス。之ヲ手網十間毎ニ一本宛入レル(溜側ノ方ヘ片方ノミ入ル)
  経營方法 漁夫ハ凡テ給料雇入ニシテ主ニ南部、野邊地方ノモノヲ雇入ル。土地ノ人ハ船頭、其他四五人位トス。一人給金・一ヵ月二十二、三圓ニシテ、食料ハ一ヵ月一俵代ト見テ推算ス(醬油味噌代ヲ合シテ)
  漁獲物 漁獲物ハ鰮、鮪、柔魚、鱒等ヲ主ナルモノトス。
      鮪ノ見ユル年ハ六月中旬ヨリ來リ七月ヲ盛漁トス、十一月中旬マデトス。
      鰮ハ六月上旬ヨリ十二月下旬マデニシテ十一月下旬前後ガ盛漁期トス。
      昨年鮪六百尾(小鮪ナレバ一貫七百匁乃至二貫、大鮪〓二二入ル手網「カニ」〓貫トス)一尾平均十一圓、柔魚八百箱(一函百四十五尾入、一函三圓五十銭)其他ニテ約二万圓トス。良キ年ハ七、八万圓ヲ揚ゲタルコトアリ。
  (鰮地曳網漁業)
  統数 昭和六年七年、三統、昭和八年、二統。
  使用漁船及從業員 網船一隻(胴海)、枠船五、六隻(川崎船)、磯船二隻。從業員、約五十名。
  漁期及漁場 漁期ハ十月末ヨリ翌年一月迄。漁場濱中沿岸四尋乃至十尋トス。
  漁具ノ太サ 小舌長二十尋、垣網(手網)一方二百尋トス。
      小舌網ハ綿糸三號二十節、垣網ハ奥綿糸二號又ハ三號二十節、手元ノ方綿糸二號又ハ三號十八節トス。曳網ハ「ロップ」徑八分一方長三十尋ノモノ十二房位トス。
  経営方法 歩合制度ニシテ漁業主四分、從業員六分、生玉粕ヲ以テ歩合ヲ定ム。雜用ハ歩合二応ジテ各自負擔ヲナス。
  漁獲高 昭和七年千七百石(二統)。昭和六年二千二百石(三統)。昭和五年千二百石(三統)
  (鰮角網漁業)
  着業統數 昭和八年八統。昭和七年・六年・五年、各七統。
  使用船數 起船(保津船)一隻、汲舟(保津又ハ胴海)二隻又ハ三隻。枠船(保津船)三隻。磯舟二隻。
      從業員二十四、五名トス。
  漁期及漁場 漁期ハ十月ヨリ翌年一月マデ、沖出四、五十間ニシテ、海深五、六尋乃至十一、二尋マデ。
  漁獲高 漁獲物ハ眞鰮ノ外鯖時ニ柔魚ヲ副漁スルモ自家用ニ止マル。
      昭和七年三万千八百六十石。昭和六年七千二百三十三石。昭和五年千九百七十石。
  (鰮揚繰網漁業)
 統數 一統、昭和七年ヨリ創始ス。
  使用漁船數 網船(川崎船)二隻各十二三各乘込ム。枠船五、六隻(保津船又ハ胴海船)。魚見船(磯船)一隻。總員五十名。
  漁期及漁場 漁期ハ十月末ヨリ一月マデ、沿岸海深凡六十尋以内。
  漁獲高 昭和七年、千石。

椴法華村鰮漁獲高