木管水道より上水道へ

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 本村の番屋川を水源として明治四十三年ごろから木管による簡易水道が敷設されていたことは前項で述べたが、昭和二十二年には給水範囲は村内の約五分の一の地域であり、しかも施設・設備は老朽化し使用に堪えざる状態になりつつあった。こうした状況の中で飲料水の確保・保健衛生上の理由・防火用水・入港船に対する給水などの理由により、どうしても全村的な規模の上水道の設備が必要となり、このことは全村民の強く要望するところとなった。
 こうして村の理事者や村会議員はこの問題に対して一丸となって取り組み、道や国の援助を求め昭和二十四年九月には椴法華村上水道新設工事までこぎつけるに至った。
 次に「上水道新設工事地方起債」関係の公文書類の中から、上水道工事を必要とする理由とその計画内容について記すことにする。
 
    亀田郡椴法華村上水道新設工事
  一 事業を必要とする理由
   イ 飲料水及び防火用水の現況
   ロ 上水道敷設後の衛生上及び防火上などにおける改善程度
   由来本村は飲料水に非常に不便を感じて居り村民は共同で不完全な共同井戸若くは自然の湧水流れにより飲料水とその他用水に供して居りまして今より四十年前島地域のみ申合組合にて木管による簡易水道を敷設せるも其の後資材難その他の事情により他部落に及ばず目下漸く百戸足らずの右部落のみ辛うじて使用している状態にあります。終戦後引揚者等入村により急激に増加せる人口と吾が國唯一の豊庫として近年特に衆望を〓めつゝある恵山漁田を眼前に控え避難港を沿岸漁村民より緊急築設方要望されている現況と字元村にある船入澗も本年度より復旧される事に決定され船舶給水用として亦最近各地に火災頻発して貴重な財産を烏有に帰している状況にあるとき一朝本村に於ても事態が発生した際は即ち本村唯一の消火水として海水に期待しているも万一時化に遭遇せる際は消防機能も充分発揮する事が出来ず誠に寒心に堪えない次第であります。斯る見地から急速消火道路の整備と相俟って全村に亘り上水道の施設を痛感し工事に着手しようとしているのでありこの工事の完成により小中學校生徒は言ふに及ばず部内全村民の飲料水を給し剰へ船入澗出入漁船の給水をも兼ね併せて一朝有事の際の消火用水として十二分にその使命を果すことが出来るのであります。
   ハ 給水戸数給水量事業収入
    A給水戸数  五七〇戸
    B給水量   六三〇立方米(一日)
    C事業収入  年一、三八六、〇〇〇円
     内訳共用栓五七〇戸、一戸月一三〇円、年一、〇二六、〇〇〇円
       船舶給水三六〇〇隻、一隻一〇〇円、年三六〇、〇〇〇円
  二 事業の説明
   イ 事業方法
   A水源地の場所及び水源地と給水区域間の距離
    (イ)椴法華村字恵山  四、五〇〇米
    (ロ)同 村字元村   一、二〇〇米
   B源水区分  (イ)(ロ) 渓流
   C取入方法  (イ)(ロ) 自然流下
   D給水区域  字元村・富浦・島・八幡町・浜町・銚子
   E給水方法  共同給水
   F給水能力
    (イ) 予定給水人口  三、五〇〇人
    (ロ) 一日一人当平均給水量及最大給水量
        一二〇立   一八〇立
   G濾過方法 簡易塩素滅菌機を備へる
   H送水管及配水管の延長
    (イ) 送水管 字恵山一、八〇〇米、字元村二〇〇米
    (ロ) 配水管 字恵山二、七〇〇米、字元村一、〇〇〇米
   I消火栓 地下式単口消火栓を設ける
        その数一六ケ
   J共用栓 不凍式 その数三〇ケ
 
 以上のような計画に基づき村民待望の上水道新設工事が着工される運びとなり、昭和二十五年九月十五日、椴法華村字八幡町・浜町境界丁字路において上水道新設工事起工式々典が行われた。その後工事は計画どおり遂行され、昭和二十五年十一月三十日、工費千二百三十五万八千三百十六円八十五銭を以て竣工された。十二月八日上水道新設工事竣工式が小学校において開催され、続いて小・中学生の旗ふり行列及び消火栓使用による消防放水演習が小学校グラウンドにおいて実施された。