大正十二年一月二十日 函館毎日新聞
川崎船、水船となる
辛うじて當港へ入港
市内タナゴマ町二番地大問惣太郎所有川崎船三十五石積は今十九日午前三時頃茅部郡古邊(ママ)村より出漁の歸途大森濱沖合に差蒐(さしかか)りたる處折柄の波浪に航行不能となったが折柄無名の發動機船の航行を認め曳船方を依頼せるが同發動機船は十數隻の川崎船が曳船され居るため止むなく船舷に引網を以てせるが激浪と發動船の震動により同川崎船は船底を破壊し水船となり積荷は干烏賊六千尾、ハイ縄百四十ケ、衣類道具百二十點流失約五百圓の損害を蒙りたるが乘組員十名死力を盡くし漸く沈没を免れて入港するを得た。