(2)山麓緩斜面

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 山麓緩斜面としては、崖錐、麓屑面、扇状地、沖積錐などが考えられるが、これらのうちで崖錐は「急斜面を落下した岩屑がこの基部に溜った状態およびその表面で、その形態は、岩屑が定まった通路を通って落下する場合に、円錐形の一部を呈するのに対して、広い範囲の急斜面から岩屑が一様に落下する場合には、傾いた平板状を呈し、表面の傾斜角は頂部から基部までほぼ一定で、三五度内外のものが多い」(井口正男・地理学辞典)と考えられている。南茅部町の山麓緩斜面は二種類に分けられる。一つは海岸段丘にのるものであり、他には八木川上流部に見出されるものである。
 海岸段上の山麓緩斜面は豊崎地域から川汲地域にかけて見出され、背後はほぼ一〇〇メートルを境にして急斜面が見出されるが、このうち、六〇メートル以下はきわめて平坦で、海岸段丘面を示すが、六〇―一〇〇メートルの高度の所は緩斜面をなしており、海岸段丘面と交叉している。この面の傾斜は七―一〇度くらいであり、崖錐が岩屑の安息角である三五度内外の傾斜角を示すことと比較すると、はるかに低い傾斜角をもっている。この六〇―一〇〇メートル面の堆積物は角礫のみよりなり、また、きわめて低い傾斜角を示し、崖錐は表面傾斜が一五度以上、麓屑面は同じく一五度以下と一般に考えられることからみても、崖錐堆積物というよりは麓屑面的なものとみることが出来る。
 八木川上流の山麓緩斜面は前述のものとは異なり、傾斜も急であり、背後の火山岩山地より供給された角礫から成り立っていることからみると、崖錐堆積物と考えられ、この地形面は崖錐であるとみることができる。