沼尻吟詠

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 砂原から沼尻ヘ一里一六町、漁師とアイヌが雑居している寒村であった。
 駒ケ岳の広い裾野が海に落ちる曠野である。雪に埋もれて道らしい道もなく、馬の足さえ立たないぬかるみも多かったから雪の行軍は難行苦行の連続であった。
 この時の心境を託した額兵隊長星恂太郎の「渡海」と題する詩がある。
     鷲木之潟鹿部原
     石川行尽落森村
     空灘杳渺連天処
     砂浦峯頭月一痕