一 はじめに

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 日本古来の神話伝説を主体とする歴史観は、太平洋戦争の敗戦を契機に見直され、代わって実証的な歴史観が台頭し主流を占めるに至った。特に、この傾向は文字による記録の出現以前を研究の舞台とする考古学に強かった。それは、地下に埋没している遺構・遺物などの埋蔵物に光を当て、記録とは異なった資料を基に、歴史を組み立てようとする意欲が背後の支えになっていたからである。
 我々の住む青森県も、他の諸県と同様に、歴史は旧石器時代から始まり、縄文・弥生などの時代を経ながら今日に達する同じ道を歩んできた。しかも、本州北端という地理的位置の利点が大きく影響を与え、南から北上の文化と、北から南下の文化は、本県を終点または通過点としながら南北に広く伝播していったのであった。今日、青森県における考古学上の数多い新事実の発見は、先述のような諸事情が背景に存在する結果と思われる。
 明治以来、考古学に魅力を感じ、斯学の発展の礎となった先覚者は多い。これら新しい学問の摂取を心に抱いた先覚者の意欲と業績をしのんでみよう。