教育に関する「被仰出書」(おおせだされしょ)

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明治五年(一八七二)七月に公布された教育に関する「被仰出書」は、学制の実施によって全国的な学校制度を創設するに際しての、政府の教育理念を一般国民に理解してもらおうとした一種の教育宣言ともいうべきもので、きわめて注目される。「被仰出書」で第一番に目を引かれるのは、従来の封建的教育体制が根本的に否定され、学問は「士人以上の事」としてはならないとし、また「農工商婦女子を度外に」置いてはいけないと強調しているところに、教育の機会均等と国民皆学の理想を追求した政府の態度が示されている。

写真52「被仰出書」(太政官布告第214号)

 また、「学問は身を立てる財本ともいふべきもの」として、学校の教育目的を個人の利益を高めるため、と規定している点も注目される。学校で教えるのは「日用常行言語書算を初め士官農商、百工技芸、及び法律、政治、天文、医療等に至る迄凡(およそ)人の営むところのこと」と教育内容が詳しく示されている。また、学校における教育は日常生活に必要な「実学」でなければならないとしている。
 政府が「被仰出書」を出して国民に求め、また、みずからを鼓舞したのは「邑(むら)に不学の家なく家に不学の人なからしめん事」の一句であろう。明治政府は国民皆学の理想をはっきりと打ち出し、それを国民に示したのである。