商工会議所の廃止

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昭和十八年(一九四三)には、帝国議会において、商工経済会法が成立し、青森、弘前、八戸の商工会議所は解散し、青森県商工経済会が設置された。解散した商工会議所は、商工経済会の支部となった。青森県商工経済会の発足に当たって宇都宮知事は挨拶を行ったが、その中には商工業に関する国の施策を実施する意図が明示されていた。それは次のようになっている。
 本日茲に青森県経済会創立総会を開催するに当り、一言御挨拶を申述べたいと存じます。
御承知の通り過る第八一帝国議会に於て制定されました商工経済会法に基き、各都道府県に於て商工経済会の設立致することゝ相成り、之と同時に従来の商工会議所は之を発展的解消を致すことゝ相成るのでありますが、我国に於ける商工会議所制度の制定は明治中葉に至るのでありまして、其間関係者各位の商工業発展の為め貢献せらるゝ処、誠に甚大なるものがあったのであります。
 然るに今や我国は、振古未曾有の非常時的に直面して居り、此のために国の総力は挙げて戦力増強に集中致し、之を最も有効に発揮せしむることが緊急の用務でありますが、之がためには、国内産業経済の組織を整備し、以て戦争遂行力の完成強化を図ることが最も肝要であると存するのでありまして、政府はさきに重要産業団法令による統制会制度の実施に依り、重要産業部門に対し夫々業種別に生産、配給、消費の縱に貫く統制組織を完備致し、更に其の下部機構は今回制定の商工組合法等に依り整備することゝ相成ったのありますが、之等多種多様な業種業態を、打って一丸としたる綜合的の団体を地域別に結成することにより、全体的横の調整を図り、以て総力発揮体制の完璧を期しておるのでありまして、商工経済会法制定の趣旨も亦此点に存するのであります。
 県に於ては斯る政府の施策を順応し、設立委員各位とも連絡の上、諸準備を援助して参りましたが、幸い今日創立総会が開催され、今後本会の運営に関する大綱が決定せらるゝことは真に本県産業経済の発展上慶賀すべきことでありまして、本会の役員並に会員各位は真に打って一丸となり、本県行政機関と表裏一体となり、県産業経済を強力に推進し、以て統制経済運営を円滑ならしむる様、切に協力あらんことを切望して止まぬ次第であります。
 以上甚だ簡単でありますが、所懐の一端を申述べまして御挨拶と致す次第であります。
  昭和十八年八月三十日
             青森県知事 宇都宮孝平
(前掲『弘前商工会議所五十年史』)