終戦直後の弘前市会

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昭和二十年十月二十五日の弘前市会は、新しい地方政治への意欲と深刻な経済問題がないませになっている。議長は桜田清芽である。市会議事録で当時の雰囲気を再現する。
二十一番柏幸治郎君 議長ニ諒解ヲ得テ置キタイト思ヒマスガ本日ハ終戦後第一回ノ市会デアリ市民生活ニ重大関係ヲ有スルモノデアリマスカラ市政ノ全般ニ亙り自由ニ討議セシムル様予メ御願ヒシテオキマス 嚮(さき)ニ政府ハ官僚独善デ市会ノ権限ヲ抑圧シテ参事会ニ代行サセテ居リマスガ今ヤ終戦ト共ニアラユル方面ニ改善ヲ加ヘラレテ居リマスノデ此際現行法規ノ市会ノ権限ニ呼戻ス意志アリマセヌカ

助役羽賀良太郎君 ソレハ全国的ノ地方自治体ノ有スル問題デアルト思ヒマス ソレデ今其ノ意志アリトシテモメチャメチャニハイカズ合法的ニ取扱ハナケレバナラヌト思ヒマス 良イコトデモ法令ニ縛ラレルト思ヒマス趣旨丈ケハ了承シマス

三十一番柏幸治郎君 私ハ法令ノ改正ヲ要求シタノデナイ 市会ノ現行法規ハ内務次官ノ通牒ニ依テ制限セラレテルノデソレヲ現行法令ノ根本ニ呼戻スノデス

  次ニ市長ハ今後市政運営ニ就テ如何ナル方面ニ対シテ重点ヲ置イテ行フヤ承リタイ
助役羽賀良太郎君 御趣旨ハ解リマシタ 改正市制ニ内務次官ノ通牒ノ意嚮ガ織込マシテ居ルト思フノデドウシテモ内務次官ノ通牒ハ無視スルコトハ出来ナイト思ヒマス但シ一々個々ノ問題ニ付テハドウカト思ヒマスガ全面的ニハ聊カ無理ガ生ズルノデナイカト思ヒマス

市長葛原運次郎君 市政運営ノ根本方針トシテハ市民ノ衣食住ノ安定トイフコトニ向テ進テ行ク積リデス

六番石澤勇君 現在火葬場ニ薪一本モ無ク市民ハ薪ヲ持参シナケレバ屍体ヲ焼カレヌトハ何タル状態デスカ 市長ハ衣食住ノ問題許リデナク死人ニ対シテモモット関心ヲ持ッテ死屍ニ対スル処理ヲ一層完全ニセラルル様希望シマス

 この市会は午後退席者が続出して流会となった。理事者の答弁内容に熱意がみられないことが原因と議員側から述べられた。