昭和五十四年に、青森県内の六つの商工会議所とむつ、三沢の商工会は、県内八市につき、合計一一〇〇の事業所を対象として、アンケートにより賃金動向の調査を実施した。回答は八〇二事業所から得られ、回答率は七二・九%であった。これにより、安定成長過程での青森県の賃金動向を見てみよう(以下、『弘前商工会議所会報』二六九による)。
昭和五十四年の全国の賃上げは平均約一万円、上昇率は六・〇%であった。これは前年の九二一八円、上昇率五・九%とほぼ同水準であった(労働省調査)。これに対して青森県は、初任給の上昇率が六・四%で、前年の六・九%を下回った。次年度の予想は六・二%となっていた。五十四年の初任給上昇率六・四%は、その前に行われた青森県の最低賃金の改定率六・五%とほぼ一致していた。なお、改定された青森県の最低賃金は一日当たり二三七三円であった。これらは、青森県の賃金動向か全国水準に近づき、格差が解消する方向へ向かっていることを示している。
次に昇給動向は、初任給に対して、男子では、三〇歳で一・五倍、三五歳で二倍となり、五〇歳では二・九倍となっている。これに対し、女子では、二七歳で一・五倍となるが、二倍になるのは四五歳で、男女格差があることがわかる。職種別賃金については、金融・保険業が最も高く、次いで運輸・通信・倉庫業、建設業が高い。このほか、従業員数による事業所の大きさと賃金の関係では、大企業ほど賃金が高いことなどがわかった。
昭和六十年の調査では、全体的な賃金の停滞傾向は続きながら、女子の賃金が上昇し、男女間の格差が縮小してきていることがわかる。それは、次の調査報告に現れている。
県経済は、テクノポリス指定や各種プロジェクトなどを刺激剤とし、明るさを取り戻しつつあるものの、回復感には乏しく、企業倒産も跡をたたない。
こうした中、県下八市の企業一、一〇〇社を対象としたモデル賃金調査によると、初任給上昇率が三・七%にとどまるなど、ここ数年の低率傾向に変化は見られない。今後もこうした低迷状態からの脱却には、かなりの時間を要するものと見られ、従業員高齢化、労働の機械化等と相まって、企業の抱える問題は複雑化している。(中略)
本年度(注・昭和六十年度)のモデル賃金を男女・学歴・職種別に見ると、「男子・大卒・事務」では、二二歳(初任給)で二・一%増の一二万三二六四円、二五歳で二・七%増の一四万九四六五円、三〇歳で一・三%増の一八万三五五〇円となっている。(中略)技術系職種では、近年全国的に高い数値を示しているが、本県は低い数値になっている。
一方女子では、事務系の賃金が高い伸びを示し、「女子・高卒・事務」で一八歳、四・四%増の九万四二七五円、一九歳で三・二%増の九万七一九七円と全体的に高い昇給率を見た。
初任給(に対する)賃金倍率では、大卒男子では三五~三六歳位、勤続年数一三年で初任給の約二倍、又高卒は三四~三五歳、勤続年数一七年で約二倍になる。つまり初任給の約二倍になるのに十四、五年かかるのが標準ラインであり、ここ数年変わらない傾向となっている。
初任給を学歴別に見ると、「大学卒・男子」が一二万二七三〇円、「高校卒・男子」九万七〇一八円、「同女子」が九万四五八七円となり、前年と比較してみると、「大卒男子」が四・〇%、四七二六円の上昇、「高卒男子」は一・三四%、一二八七円上昇となり、「高卒男子」の伸びが低い。一方、「高卒女子」は四・七五%、四二八七円と近年にない伸びを示した。
男女平均では昨年の三〇四六円、三・四%から三四一六円、三・七%とやや上昇のきざしを見せている(『弘前商工会議所会報』三四二、( )部分を一部訂正)。