解題・説明
|
芭蕉翁故郷塚のある愛染院は、上野農人町に所在する真言宗豊山派の松尾家菩提寺で、正式名称は遍光山愛染院願成寺である。松尾芭蕉の木像や陶像、墨跡のほか、多数の関係資料が収蔵されている。絵葉書は、元禄7年(1694)閏5月晦日に芭蕉が弟子の膳所藩家老職、菅沼曲翠(曲水)に宛てた書簡である。曲翠は、芭蕉が信頼を寄せた門人の一人で、現存する芭蕉書簡では曲翠宛のものが最も多い。大坂の門人、浜田洒堂・槐本之道が訪ねてきたこと、あとしばらく落柿舎に滞在してから膳所に行く予定であることに加え、多忙な曲翠の体調を気遣う内容となっている。
|