解題・説明
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上野城及び城下町の様子を描いた絵図である。寺社の区画や道路、池・堀などの部分が彩色されているが凡例はない。侍屋敷には居住する藩士の名前が記入され、その藩士名から絵図は万治年間(1658~1661)頃の様子を描いていると思われる。ただし、左下部の歴代領主の名前が列記されている部分に、寛文9年(1669)に藤堂藩主に就任する藤堂高久の名前が確認できることから、絵図の製作自体は同年以降と考えられる。本図では、鉄砲組屋敷があった部分に「足軽町」と記載するなど、他の上野城下町絵図にはない表現が見られる。また、城郭・城下町の全体的な構図も従来まで確認されている系統の絵図とは様相が異なっている。その一方で、上野城の櫓の数が1棟多く描かれ、藩主が越国の際に使用した御殿(米蔵に隣接)部分は空白になっている。さらに絵図中央部の「二ノ町通り」と「三ノ町通り」の記載も逆転しており、地域情報の乏しさもうかがえる。
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