解題・説明
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明治7年(1874)5月15日から30日間にわたり、旧藩主の御殿を会場に開催された博覧会の絵図である。左上部に会場となった御殿が描かれ、その下部左側に「小学校」の旗がたなびく旧藩校崇広堂の建物が見られる。下部右側には、警察署の前身である取締所が設置されていた東大手門が描かれ、小学校との間に人力車に乗って洋傘を差す人などが確認できる。博覧会の主催は、筒井甃三郎・菊輪茂十郎ら地元商人有志による「博覧会社」で、絵図の右上部には開催の意義が「固陋ノ地モ一洗シテ文明ノ域トナリ」などと記されている。江戸時代に藩の施設であった場所に双眼鏡・オルゴールなど最先端の輸入品、陶器・傘など伊賀の特産品を展示する博覧会の開催からは、藩政下に統制・保護を受けていた経済・産業を地域の人々で担おうとする意志が感じ取れる。なお、博覧会は毎日午前8時から午後4時まで開場し、会場への通行券は1人3銭(5歳以下無料)であった。
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