湯立神楽

162 ~ 169 / 209ページ
神楽は清め・祓(はら)い・鎮魂(たましずめ)をして、人間の生命力の復活をはかることによって長命を祈る芸能。
 湯立神楽は、神座の近くにすえた釜に湯をたぎらせ、その湯を神々に献じ、またその湯を人々にふりかけることによってけがれを払い清め、魂の再生をはかる神楽。主として霜月(旧暦十一月)に行われるところから霜月神楽、霜月祭りともいう。
 
遠山の霜月祭り・みそぎ 上村 昭和33年1月
面役に選ばれた者は遠山川に入って身を清める。

 
遠山の霜月祭り・きり火 上村程野 昭和33年12月
昔ながらのきり火で火をおこす。

 
遠山の霜月祭り・初まいり 上村 昭和33年1月
生まれてはじめての祭の日、氏神様に参って袮宜にお抜いをして頂く。

 
遠山の霜月祭り・日月(じつげつ)の舞 上村 昭和33年1月
鈴と扇を持って釜の周りを回り「おん日月のえまゆまします大空へ粕毛の駒に手綱よりかけ」と神返しの歌を唱える。

 
遠山の霜月祭り
 下伊那郡上(かみ)村、南信濃村のいわゆる遠山地方では旧暦霜月のころ(今は12月8日~1月4日)に、神々を湯釜のほとりに招き、神聖な湯を立て、その湯を神に献じて神楽をあげる、湯立て神楽を中心とした祭りが夜を徹して行われる。湯立て神楽についで、面(おもて)の舞となる。これは土地の神や、江戸時代のはじめに亡びた遠山様になぞらえた面の舞があり、水王、火王などが出て、はねおどり、素手で湯を人々にはね掛け、相和しておどる。年末に人々の魂を清めて、神の霊力を秘めた新しい魂になって新年を迎えようとするこころ。この霜月神楽は、伊勢神宮の湯立神楽の系統をひくもので、国の重要無形民俗文化財に指定される。
 
遠山の霜月祭り・稲荷面 上村上町
赤頭巾をつけ、右手に木刀を持ち、両手を大きくふりまわしながら稲荷面が出てくる。

 
遠山の霜月祭り・夜店 上村 昭和33年1月
子供たちにとっては祭りの楽しみの一つ。

 
坂部の冬祭り・たいきり面 下伊那郡天龍村神原坂部 昭和41年1月
たいきりとは松明(たいまつ)の火を切るの意で、面形(めんぎょう)の舞のうち最もはなやかなものである。

 
坂部(さかんべ)の冬祭り
 下伊那郡天龍村坂部の諏訪神社の一月四日、夜を徹しての祭り。夕刻、下の森の火王社からお上りし、祭典のあと花の舞があり、湯立てと神楽がつづき、面(おもて)の舞となる。鬼の鉞(まさかり)と袮宜(ねぎ)のたいまつと切りあうたいきり面の舞につづき、天公鬼、小公鬼の舞などあり、水王様が出て湯を人々にかけ、火王様・翁(おきな)面・日月面・女郎面が出、海道下り・魚釣りの狂言風の所作が面白い。この祭りは古くは旧暦の霜月のころ行われた湯立て神楽である。
 
坂部の冬祭り・たいきり面 昭和32年1月
面形の舞の最初にでる「たい切り面」。赤い面・赤装束で大きな斧をふり、五方を拝して舞う。

 
坂部の冬祭り・日月面、女郎面 昭和32年1月

 
坂部の冬祭り 下伊那郡天龍村神原坂部 昭和41年1月
撞木杖をもった青公鬼面・天公鬼面の舞。

 
坂部の冬祭り・順の舞 下伊那郡天龍村神原坂部 昭和33年1月
神子4人が鈴を持って舞う。

 
向方のお潔め祭り 天龍村向方
 村の天照皇大神社の1月3日の祭り。神の子として生まれ清めた宮人(みょうと)の人々が祭りに奉仕する中心。宮人の人々の順の舞があり、採り物を八たび取り替えて舞う花のようとめの舞があり、湯立となる。あと、湯囃子の舞は、4人で舞う四つ舞、3人で舞う三つ舞があり、いずれも、採り物は、やちご(幣(たから))・剣と三たび取り替えて舞う。最後に火伏せの舞といい、釜の火を搔き出してその熾(おき)の上で激しく舞う順(ずん)の舞で終わる。
 
向方のお潔め祭り・お祓いの神事 下伊那郡天龍村神原向方 昭和51年1月

 
向方のお潔め祭り・お浜下り 下伊那郡天龍村神原向方 昭和51年1月

 
向方のお潔め祭り・関殿の湯立 昭和35年