昭和63年(1988)1月15日 第25回日本選手権試合

国立競技場

早大 22-16 東芝府中●

木本ワセダ、会心の勝利

昭和62年(1987)度 第25回日本選手権試合
1988年1月15日 G:国立競技場 R:八木宏器 KO 14:00
早大 22 16 東芝府中
C1 永田 隆憲(④筑紫高) 10 12 1 藤沢 義之(東海大)
2 森島 弘光(②日川高) 12 4 2 佐藤 康信(明大)
3 頓所 明彦(④巻高) 3 馬場 利宏(明大)
4 弘田 知巳(④早実高) 1 T 1 4 松本 康広(中大)
5 篠原 太郎(③筑紫高) 0 G 1 5 河村 年也(専大)
6 神田 識二朗(④福岡高) 2 PG 2 C6 花岡 伸明(筑波大)
7 清田 真央(③神戸高) 0 DG 0 7 田中  良(帝京大)
8 清宮 克幸(②茨田高) 8 芳村 正徳(明大)
9 堀越 正巳(①熊谷工) 1 T 1 9 田中 宏直(日大)
10 前田 夏洋(②修猷館高) 1 G 0 10 渡部 監祥(帝京大)
11 今泉  清(①大分舞鶴高) 2 PG 0 11 戸嶋 秀夫(日大)
12 今駒 憲二(④生田高) 0 DG 0 12 石川  敏(日大)
13 藤掛 三男(①佐野高) 13 奈良  修(秋田工)
14 桑島 靖明(④石神井高) 6 13 14 鬼澤  淳(帝京大)
15 加藤 進一郎(④久我山高) 15 向井 昭吾(東海大)

 実に16年ぶりの日本一だった。早大の新人トリオ、堀越、藤掛、今泉が活躍したこの試合を覚えているファンも多いだろう。早大の強化委員長を務めていた私は、明大に勝って対抗戦全勝を果たしたあと、正月に向けてさらに強化すべく検討を重ねた。私は攻撃力強化のためにWTBの今泉をFBに起用することを提案した。木本監督はCTBの中島に代えて新人の藤掛を入れると答えた。中島は対抗戦全勝の貢献者だが、木本は高校時代フランカーだった藤掛の突進力とタックルに賭けるという。メンバーの決定権は監督にあり、私ももちろんそれを容認した。結果は木本監督の決断が正解で藤掛が猛タックルを随所に見せて勝利の立役者となった。

 前半6分、早大がラックから右に展開、CTB今駒が東芝の「詰め」ディフェンスを読んだ飛ばしパスが見事に決まり、WTB桑島が右隅にトライして先行する(早大4−0東芝)。8分早大今泉がPGに成功(早大7−0東芝)。16分東芝FB向井がPG(早大7−3東芝)。18分早大今泉PG(早大10−3東芝)。38分東芝怒涛の連続攻撃に早大がオフサイド、SO渡部がPG(早大10−6東芝)、ロスタイムの41分、東芝はラックから向井が抜け、CTB石川が猛進して左隅にトライ、渡部のゴールも決まって逆転しハーフタイム(早大10−12東芝)。

 後半7分早大今泉PGに成功して再逆転(早大13−12)、17分早大スクラムから藤掛が突進、ラックからSH堀越、No8清宮、FB加藤とパスが通り右隅にトライ、今泉ゴール(早大19−12東芝)。30分東芝モールからSH田中からFL花岡でトライ(早大19−16)。38分早大今泉PG(早大22−16東芝)。

『ラグビーマガジン』Vol.172に佐野克郎が「ワセダを勝利に導いた男」と題して木本建治監督の特集をしているなかに、新人トリオのくだりがある。「木本監督の藤掛起用の狙いは、動物的なカンに支えられた恐れを知らないタックルにあった。『あいつはこれしか見えないんだ』とその手のひらを顔から先へ突き出して苦笑していたが、どうしてどうして、藤掛のハードタックルで早大の攻撃チャンスが生じたという結果になった。今泉も今やすっかり有名になった『イチ、ニ、サン、シ、ゴー』の掛け声から、確率の高いゴールキックで早大の得点源になってきた。そこへ持ってきてSH堀越の文句なしのパスワーク、さらにそれ以上にバックアップと懐の深さを見せるディフェンス力が光った。これら1年生トリオの力を見抜いて自分のラグビーをあくまで貫き、目標を達成したのが木本監督だったのである」。

 木本監督もすごかったが、この年木本ラグビーを具現した部員たち、とくに永田主将と神田、今駒の4年生トリオの活躍は見事だった。