平成3年(1991)1月6日 平成2年(1990)度 第27回大学選手権決勝

写真 機関誌
国立競技場
明大 16-13 早大
吉田が決めた! 明大、大学日本
平成2年(1990)度 第27回大学選手権決勝
1991年1月6日 G:国立競技場 R:八木宏器 KO 14:00
明大1613早大
1佐藤 豪一(③久我山高)641小山 義弘(③桐蔭学園)
2西原 在日(④大工大高)1092池田 晃久(③早大学院)
3飯塚  淳(④大工大高)3佐藤 友重(①秋田工)
4青木 聡史(③久我山高)0T14小川 洋平(④早大学院)
5坂元 勝彦(③都城高)0G05今西 俊貴(③報徳学園)
6佐藤 久富(③秋田工)2PG06富野 永和(②牧野高)
7小村  淳(③函館有斗高)0DG07相良 南海夫(③早大学院)
8冨岡  洋(④東福岡高)8直江 恒洋(④久我山高)
9永友 洋司(②都城高)2T1C9堀越 正巳(④熊谷工)
10鈴木 博久(③本郷高)1G110守屋 泰宏(③早大学院)
C11吉田 義人(④秋田工)0PG111増保 輝則(①城北高)
12元木 由記雄(①大工大高)0DG012吉雄  潤(③久我山高)
13岡安 倫明(②明大中野)13藤掛 三男(④佐野高)
14丹羽 政彦(④羽幌高)141214郷田  正(④筑紫丘高)
15小杉山 英克(③秋田高)15今泉  清(④大分舞鶴高)
交代【明】土佐忠麿(②天理高)⑭ 【早】石井晃(③調布北高)⑫

「試合は明大が先行した。8分と25分に丹羽がPGを決めた。一方の早大は頼みの守屋が2つのPGを外して前途に暗雲を感じさせる。21分には吉雄が足を痛め石井と交替する。27分に今度は30メートルのPGを今泉が狙ったがこれも入らない。やきもきする早大を沸かせたのは31分の増保のトライだ。ラインアウトでのクイックスローからチャンスをつかみ、さらに守屋のパントを追った増保が拾い、吉田のタックルを受けながら左隅へ飛び込む。増保のトライチャンスを生かすゴール前のプレーは天性のものがある。4−6ともつれ込んでゲームは後半に移っていくが、ここでも先手を取ったのが明大だ。3分、ゴール前のラインアウトから永友がサイドを突き、佐藤久富が飛び込んでトライ、丹羽がゴールを決めて12−4と早大を引き離す。そうはさせじと早大も食らいつき、13分に守屋がPGに成功、17分にはラインアウトからのこぼれ球を堀越が割って出る、このボールのバウンドが変わって明大FBの小杉山が処理し損なったところを早大、相良が出足よく飛び込んでトライ、守屋のゴールも決まってついに13−12と逆転した。
 この試合最大の、いやこのシーズン最大のエキサイティングな明大吉田の快走は後半26分に起こった。FWのタテ突進から明大が左オープンに回した。鈴木からの飛ばしパスが元木、吉田とわたる。吉田がボールを手にしたのがハーフウェーラインをちょっと越えたところだ。今泉が必死に吉田のタックルに向かう。吉田はいったん捕まりかけてスピードが落ちた。明らかに一度走るのをあきらめてサポートを探した。もし、誰か明大の選手がフォローしていたら吉田はパスしたに違いない。そんな動きに見えた。その結果やはりトライになったかどうかは誰にもわからない。幸か不幸か明大の選手がいい位置にいなかった。吉田は体勢を立てなおして走り直した。この瞬間私の頭に、昭和59年の早慶戦で慶大の若林に走られたプレーがよぎり、ぶるっと身体が震えたのを覚えている。
 増保が、石井が、タックルをかわされた。今西が飛びついたときは吉田の身体がインゴールに入っていた。明大を率いるキャプテン吉田が、自らの激走で早大を破った瞬間であった。このシーンは早大ファンにも、明大ファンにも忘れられない瞬間だろう。
 その後早大にも、もうワンチャンスあった。35分に、直江、堀越、今泉、郷田とつないで、郷田があわや逆転トライかという際どいプレーがあり、最後まで競技場を熱狂の渦に包み込んだ。だが郷田の身体はコーナーポストに当たり、秋の同点優勝の決着は明大の逆転優勝で幕が閉じられた」(『早稲田ラグビー史』P339)。