令和元年(2019)10月20日 G:東京スタジアム R:ウェイン・バーンズ(ENG)
●日本代表 3-26 南アフリカ代表○
No.596★357 ラグビーワールドカップ2019 決勝トーナメント準々決勝 南アフリカ代表戦 | ||||||
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2019年10月20日 G:東京スタジアム R:ベン・オキーフ(NZ) | ||||||
日本代表 | 3 | - | 26 | 南アフリカ代表 | ||
1 | 稲垣 啓太(パナソニック) | 3 | 前 | 5 | 1 | テンダイ・ムタワリラ |
2 | 堀江 翔太(パナソニック) | 0 | 後 | 21 | 2 | ムボンゲニ・ムボナンビ |
3 | 具 智元(ホンダ) | 3 | フランス・マルヘルベ | |||
4 | トンプソン ルーク(近鉄) | 0 | T | 1 | 4 | エベン・エツベス |
5 | ジェームス・ムーア(サニックス) | 0 | G | 0 | 5 | ルード・デヤハー |
C6 | リーチ マイケル(東芝) | 1 | PG | 0 | C6 | シヤ・コリシ |
7 | ピーター・ラブスカフニ(クボタ) | 0 | DG | 0 | 7 | ピーターステフ・デュトイ |
8 | 姫野 和樹(トヨタ) | 8 | ドゥエイン・フェルミューレン | |||
9 | 流 大(サントリー) | 0 | T | 2 | 9 | ファフ・デクラーク |
10 | 田村 優(キヤノン) | 0 | G | 1 | 10 | ハンドレ・ポラード |
11 | 福岡 堅樹(パナソニック) | 0 | PG | 3 | 11 | マカゾレ・マピンピ |
12 | 中村 亮土(サントリー) | 0 | DG | 0 | 12 | ダミアン・デアリエンディ |
13 | ラファエレ ティモシー(神戸製鋼) | 13 | ルカニョ・アム | |||
14 | 松島 幸太郎(サントリー) | 8 | 反 | 9(1) | 14 | チェスリン・コルベ |
15 | 山中 亮平(神鋼) | 15 | ウィリー・ルルー | |||
交代【日】中島イシレリ(神鋼)①、松田力也(パナソニック)⑩、アマナキ・レレイ・マフィ⑧、ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ)④、レメキ ロマノラヴァ⑮、ヴァル・アサエリ愛(パナソニック)③、稲垣啓太①(中島出血による交代)、坂手淳史(パナソニック)②、田中史明(パナソニック)⑨ 【南ア】マルコム・マークス②、スティーブン・キツオフ①、ビンセント・コッホ③、RGスナイマン④、フランコ・モスタート⑤、フランソワ・ロー⑧、フランス・ステイン⑭、ジェシー・クリエル⑬、ハーシェル・ヤンチース⑨ シンビン=テンダイ・ムタワリラ(南ア) | ||||||
得点:PG田村 |
日本はプール戦の4試合を、主力メンバーを中心に全力で戦い抜き、全勝で史上初の決勝トーナメント進出を決めた。相手は南アフリカ、過去優勝2回を誇り、プール戦も、初戦のNZ戦は全力投球しながら敗れたものの、その他3試合は登録メンバー31名を全員使って、疲れの残らない戦い方をしてきた。
南アのキックオフで試合は始まった。体の小さいSHデクラークとWTBコルビが、チームを鼓舞するかのように体を張り、闘争心をぶつけてきた。さすがに百戦錬磨の南ア、しかも4年前のイングランド大会初戦で、日本に32-34で敗れ、スポーツ史上最大のアップ・セットと言われていたこともあり、日本へのスカウティングも十分にしたのであろう。バックラインはオフサイド気味の出足で、日本のBK人にプレッシャーをかけ続け、ゲームメーカーのSO田村に全く余裕を与えない。開始4分の日本陣22m左サイドのスクラム。日本は相手が攻撃してくる確率の低いポジションに田村を置く戦術を取っていたのだが、南アはスクラムで圧力をかけ、リーチがブレイクできない状態を作った後、SHデクラークがブラインドサイドのWTBマピンピにパスを送り、田村と1対1になる状況を作った。スピードで外を抜かせない姿勢の田村に対し、マピンピは縦を突き、容易に田村のタックルをかわし、FB山中のタックルも振り切って左隅に飛び込んだ(0-5)。スクラムが互角であれば、リーチ、あるいは姫野が止められたはずなのだが、全てが理詰めの南アにあっさりと先制された。只、この後、南アの攻勢は続かなかった。南アが、時たま見せるターンオーバーからのアタックも、日本への意識過剰からなのか、イージーなミスでチャンスをことごとくつぶしていた。前半10分、日本の連続攻撃の際に突進したPR稲垣に対し、南アPRムタワリラがタックルで頭から落とすペナルティでシンビン(10分間の退場)となった。これで流れが変わり、前半の15分、南アのハイプレッシャーをかいくぐった日本は左へ展開し、姫野のハリーパスでエース福岡へボールが回った。福岡は、対面の小柄で快足のWTBコルビを、得意のチェンジオブペースで外へ抜き去り、FBルルーも内へかわした。これまでの相手であれば、このままインゴールへ飛び込むか、フォローの松島へパスが渡りトライとなったはずなのだが、この日の南アのDFは執念に満ち溢れていた。全力でバックアップしていたCTBデアレンデのタックルで止められた。しかしこの後、日本はFW、BK一体となった得意のアタックで南アゴール前に迫り、フェーズを重ねた。しかし接点でのパワー、ボール奪取力がこれまでのチームとは違った。全員攻撃も実らず、オフザゲートのペナルティで得点には至らず。相手が14人のうちに何とか得点したい日本は、前半19分、南ア陣中盤中央の南アボールのスクラム(7人)を押し込み、ペナルティをゲットした。田村が難なくPGを決め3-5と肉薄。この後は南アのイージーミスにも助けられ、膠着状態が続き、3-5のまま前半が終了した。日本のボール支配率が80%を超えたのだが、もしかしたら南アは、前半、守りを固めて、日本の戦略を見定める作戦だったのかもしれない。
後半南アは、前半の分析をベースに、さらに戦術を駆使しFW6人を入れたリザーブメンバーの交代も含めて、日本FWに圧力をかけてきた。4分、9分、24分と南アFWの圧力に耐えきれずに犯したペナルティを南アSOのポラードが確実に決め3-14とみるみる点差は開いた。そして迎えた26分南アが中盤で形成したモールを日本ゴール前まで一気に押し込み、最後は最強HOマルコム・マークスからデクラークへつなぎ2トライ目を奪った。
只、今大会の日本はこれでも崩れることなく、ボールを確保すれば、全員で攻撃に転じ、相手のペナルティを誘えば、田村のキックで敵陣22m内に入った。しかしこの日の終盤、勝負所のラインアウトで、ことごとく南アにボールを奪われ、得意の全員展開の攻撃に結び付けられなかった。30分SOポラードにスペースを突かれてBKに左展開され、最後は左WTBマピンピにつながれ、松島のバックアップも届かず、左隅に飛び込まれた(3-26)。以前の日本であれば、ガタガタと崩れて大量得点を与えるところだが、今大会の日本は最後まであきらめることなく、執念のタックルを繰り返した。
セーフティーリードの南アも、攻撃の手を緩めることなく攻勢を続けたが、日本も強力なタックルで応戦。最後はヴァル、稲垣のダブルタックルが炸裂し、南アの巨大ロック、スナイマン選手を仰向けに倒した。たまらず、SOポラードアタックを諦め、タッチに蹴りだしノーサイドとなった。
日本は前回大会で、「決勝トーナメントに進むためには、勝つだけではだめで、勝ち点の確実な獲得が重要である。」と学んだのだが、今大会では、「決勝トーナメントを勝ち進むための、予選プールの戦い方と、強豪国の勝負所でのセットプレーの強さ(高さ)!」を、身をもって経験することができた。そう簡単ではないであろうが、次回大会以降の更なる活躍を願わずにはいられない。
シャイな日本人がスタジアムで見せた一体感のある声援、拍手は世界の人々から絶賛される本当に素晴らしいものだった。