テストNo.358 欧州遠征2021 第1戦 ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズ戦

令和3年(2021)6月26日 G:マレーフィールド(スコットランド) R:パスカル・ガウゼル(FRA)

日本代表 10-28 ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズ

対戦日2021/06/26 (土) Kick off23:00
競技場マレーフィールド観客数--
天候晴れ/無風グラウンド
状態
良い
ドクター
記録係小川哲生
レフリーPascal Gauzeresign
アシスタントレフリー
  • Pierre Brousset
  • Cayre Ludovic
マッチコミッショナーsign
TMOEric Gauzins
ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ
#Name(cm/kg/Age)
所属
Pos.
1ローリー・サザーランド(183/113/28)
スコットランド/エディンバラ
FW
2ケン・オーウェンズ(186/112/34)
ウェールズ/スカーレッツ
3タイグ・ファーロング(184/119/28)
アイルランド/レンスター
4イアン・ヘンダーソン(195/112/29)
アイルランド/アルスター
5アランウィン・ジョーンズ(198/122/35)
ウェールズ/オスプリーズ
6タイグ・バーン(198/113/28)
アイルランド/マンスター
7ジャスティン・ティプリック(188/100/31)
ウェールズ/オスプリーズ
8ジャック・コナン(193/114/28)
アイルランド/レンスター
9コナー・マレー(187/94/32)
アイルランド/マンスター
HB
10ダン・ビガー(188/90/31)
ウェールズ/ノーサンプトン・セインツ
11ドゥハン・ファンデルメルヴァ(193/105/26)
スコットランド/エディンバラ
TB
12バンディー・アキ(178/100/31)
アイルランド/コナート
13ロビー・ヘンショウ(191/95/28)
アイルランド/レンスター
14ジョシュ・アダムス(183/95/26)
15リーアム・ウィリアムズ(188/85/30)
ウェールズ/スカーレッツ
FB
16ジェイミー・ジョージ(181/108/30) Re.
17ウィン・ジョーンズ(183/118/29)
ウェールズ/スカーレッツ
18カイル・シンクラー(179/120/28)
イングランド/ブリストル・ベアーズ
19コートニー・ローズ(201/113/32)
イングランド/ノーサンプトン・セインツ
20タウルペ・ファレタウ(189/110/30)
ウェールズ/バース
21アリ・プライス(178/88/28)
スコットランド/グラスゴー・ウォーリアーズ
22オーウェン・ファレル(181/94/29)
23アンソニー・ワトソン(188/93/27)
イングランド/バース

※背番号の白抜きはキャプテン

日本代表
#Name(cm/kg/Age)
所属
Pos.
1稲垣啓太(186/116/31)
パナソニックワイルドナイツ
FW
2坂手淳史(180/104/28)
パナソニックワイルドナイツ
3具智元(183/118/26)
HONDAHEAT
4ヴィンピー・ファンデルヴァルト(188/112/32)
NTTドコモレッドハリケーンズ
5ジェームス・ムーア(195/110/28)
6リーチマイケル(189/113/32)
7ピーター・ラブスカフニ(189/106/32)
クボタスピアーズ
8アマナキ・レレィ・マフィ(189/112/31)
キヤノンイーグルス
9茂野海人(170/75/30)
トヨタ自動車ヴェルブリッツ
HB
10田村優(181/92/32)
キヤノンイーグルス
11シオサイア・フィフィタ(187/105/22)
近鉄ライナーズ
TB
12中村亮土(181/92/30)
サントリーサンゴリアス
13ラファエレティモシー(186/100/29)
神戸製鋼コベルコスティーラーズ
14松島幸太朗(178/88/28)
ASMクレルモン・オーヴェルニュ
15山中亮平(188/100/33)
神戸製鋼コベルコスティーラーズ
FB
16堀越康介(175/100/26)
サントリーサンゴリアス
Re.
17クレイグ・ミラー(186/116/30)
パナソニックワイルドナイツ
18ヴァルアサエリ愛(187/115/32)
パナソニックワイルドナイツ
19ジャック・コーネルセン(195/110/26)
パナソニックワイルドナイツ
20姫野和樹(187/112/26)
トヨタ自動車ヴェルブリッツ
21テビタ・タタフ(183/124/25)
サントリーサンゴリアス
22齋藤直人(165/73/23)
サントリーサンゴリアス
23松田力也(181/92/27)
パナソニックワイルドナイツ
得点
HomeAway
前半後半前半後半
31T01
31G01
00PT00
00PG01
00DG00
217010
28合計10
反則
PKFKPKFK
51前半80
80後半40
131合計120

Home 交替/入替

種類時間背番号
交替前半7分5 → 19
交替前半22分7 → 20
入替後半11分3 → 18
入替後半11分1 → 17
入替後半15分2 → 16
入替後半15分12 → 22
入替後半21分9 → 21
入替後半25分15 → 23

Home 一時的退場

時間背番号内容

Away 交替/入替

種類時間背番号
入替後半10分3 → 18
入替後半10分6 → 20
入替後半10分8 → 21
入替後半10分9 → 22
入替後半14分1 → 17
入替後半21分4 → 19

Away 一時的退場

時間背番号内容

Home カード/処分

種類時間背番号内容

Away カード/処分

種類時間背番号内容

得点経過 前半Kick off : 日本代表 /後半Kick off : ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ

前半チーム名#.Name
12分ライオンズ14.ジョシュ・アダムスT5-0
14分ライオンズ10.ダン・ビガーG7-0
18分ライオンズ11.ドゥハン・ファンデルメルヴァT12-0
20分ライオンズ10.ダン・ビガーG14-0
23分ライオンズ13.ロビー・ヘンショウT19-0
24分ライオンズ10.ダン・ビガーG21-0
後半チーム名#.Name
9分ライオンズ6.タイグ・バーンT26-0
9分ライオンズ10.ダン・ビガーG28-0
19分日本代表20.姫野和樹T28-5
21分日本代表10.田村優G28-7
25分日本代表10.田村優PGx28-7
29分日本代表10.田村優PG28-10
<特記事項>
※こちらの試合記録は日本ラグビーフットボール協会による参考記録です。観客数不明
TMO:
後半6分 BIL15番のノックオンの確認の結果、ノックオンの判定。
後半7分 BIL19番のノックオンの確認の結果、ノックオンの判定(ノートライ)。


 一昨年のRWC2019日本大会において、日本代表は強豪国のアイルランドスコットランドを倒し、目標であったベストエイトに進出し、優勝国となる南アフリカに果敢に挑んだ。従来からのラグビーファンだけではなく、いわゆる「にわかファン」が急増し、TV視聴率は50%に迫った。来日した外国人たちも、日本の文化や日本人の「おもてなし」に大満足し、日本大会の評価は高まった。そんな夢のような2019年が終わり、年が明けると「新型コロナウイルス感染症」の拡大により、世界は悪夢に飲み込まれていった。あっという間に感染は世界に広がり、死者も急増し、日本のスポーツ界、そしてラグビー界にも大きな影響を与えた。トップリーグは途中で開催中止となり、以後、日本代表も含めラグビー活動は停止となった。2021年度ようやく日本代表としての活動が再開し、RWC2019日本大会での実績が認められ、ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズからの招待状が届いた。1888年に結成され、1891年の南ア遠征を皮切りに南半球の強国NZ、豪州、南アへの遠征(現在は4年に一度の遠征となっている)をしてきている。このブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズが、遠征先ではなく自国内で戦うのはアルゼンチンに次いで2国目であり、本当に名誉ある試合なのである。
 日本のキックオフで始まった試合は、前半7分ラックに入ろうとしたライオンズ主将のアランウィン・ジョーンズに対し日本のムーアが体を張ってチャージ。
 この衝撃でアランウィン・ジョーンズが肩を負傷し、結局、南ア遠征の主将も辞退となる大事故となった。その後、22分にもフランカーのティプリックが負傷交代しており、日本の激しいプレーを物語っていたのかもしれない。ムーア、ヴィンピーの愚直な突進、執拗なタックルは本当に凄まじくジェイミージャパンの根底を支えているようだった。日本は速い展開を心掛け、ライオンズを振り回し疲れさせる得意の戦法にでたが、ライオンズの守備は固く、特に重量で劣る日本選手を抱え上げ、「モールアンプレアブル(チョークタックル)」に持ち込み何度かスクラムのマイボールとした。攻めあぐねた日本に対し、ボールを取り戻したライオンズは一気に攻めて日本ゴール前に迫り、ラックを何度か連取したのちWTBジョシュ・アダムスのトライにつなげた。対面のフィフィタはいたが、スピードで外を抜かれることを恐れたのか内をつかれた。茂野もよくバックアップし腰にタックルをしたが、引きずられてトライとなった。隅からのゴールをSOダン・ビガーが難なく決め0-7となる。ライオンズの攻勢は変わらず、18分日本の22mライン近辺、右サイドのラックからWTBファンデルメルヴァが狭いブラインドサイドを突き、難なくトライを決めた(ビガーのゴールも決まり0-14)。短期間でチームを仕上げてきた日本はよく走り、良くタックルをしてきたが、この時のブラインドサイドのケアなど、細かい部分での統率が未完成だった。この後、ライオンズのエンジンが全開となり、FWがどんどん前へ出てきてゴール前でモールを組んだ。23分、押し切られることを恐れた日本はFWだけでなくBKの中村もモールへ入ったが、ライオンズはそのすきを逃さず、CTBヘンショウを縦に走らせ難なくトライを決めた(ビガーのゴールも決まり0-21)。前半20分過ぎで3トライを奪われ21失点。これは大敗の可能性もあると心配したが、体力も気力も十分に残っていた日本はそこから奮闘。勿論、ライオンズが一息ついたこともあったかもしれないが、日本はよくタックルし、マイボールからは思い切った攻めを見せ、ライオンズゴールまであと一歩のところまで迫った。フランスで鍛えられた松島のランは速く、力強く、そして柔らかい。よって確実にゲインを取り日本のチャンスに結び付けた。しかし何度かのチャンスをトライまでは結び付けられず前半は0-21のまま終わった。只々守り続けた場合、ノートライに抑えることは難しいのだが、チャンスが訪れた時に一気に攻め、ボールをキープし続けて相手を疲れさせるプレー時間があると、自ずと失点は少なくなる。
 後半、息を吹き返したライオンズがまた攻勢に出て、トライかと思われるシーンが2度あったが、FBウィリアムズ、ロックコートニー・ローズのノックオンにより、救われた。それでも攻めの姿勢を貫くライオンズは、後半9分、ラックからFWの縦突進を繰り返した後に右へ大きく展開し、ライン参加した6番バーンがゴール下に飛び込んだ(ゴールも決まり0-28)。この悪い流れを断ち切るために、日本代表は急遽4人の選手入替を行った。投入されたヴァル、姫野、タタフ、齋藤が期待に応えて躍動する。SRハイランダースで1週間前の決勝戦まで戦った姫野だけでなく、タタフ、ヴァルもライオンズの選手たちを引き裂くような突進を繰り返し、日本に勢いをつけた。初キャップとなったSH齋藤も、俊敏なパスさばきでアタックのテンポを一気に上げ、冷静な判断からレシーバーのタイミングを考えたパスアウトを実践した。迎えた後半19分、攻め続けて得たPKをライオンズゴール前に蹴り出し、日本ボールのラインアウト。サインプレーで後ろに投げ入れピールオフから姫野が持ち込み、タタフが姫野を力強くパックをしてインゴールへ引きずり込み、最後は中村のサポートも受け、姫野がライオンズゴールへダウンボールし見事にトライ。田村のゴールも決まり7-28とした。この後も日本は攻勢を続けてライオンズの反則を誘い、25分の田村のPGは失敗したが、29分にはしっかりと決め、10-28と反撃の狼煙を上げた。 残り10分、疲れの見えるライオンズに対し、日本代表FWは全員が愚直に突進とサポートを繰り返した。特にタタフの突進はマフィの全盛期を思わせる凄みで、ライオンズの選手たちをなぎ倒して前進した。
 残り5分ライオンズゴールまでラックを連取して左へ大きく展開し中村の飛ばしパスがフィフィタへつながった。フィフィタは力強く縦へ突進し、二人をかわし、インゴールは目の前。しかしライオンズ18番カイル・シンクラーの強烈なタックルを受けラックに。そのボールを拾った姫野がインゴールへ飛び込んだが、ライオンズ執念のDFでダウンボールできずにノートライ。その後もタタフの突進などあと一歩のシーンが何度かあったが、ライオンズが執念で阻止し、10-28のままフルタイムとなった。前半の20分間はどうなることかと思うような失点をしたが、その後盛り返して堂々と横綱ライオンズと渡り合った日本代表は本当に逞しかった。今後、時間をかけて作り上げていけば、2023年のRWCフランス大会までには、前大会に勝るとも劣らぬ好チームが形成されることだろう。