解題・説明
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現存する一遍上人絵詞伝は、原本系・派生系・新派生系の3系統に分類されるが、この絵詞伝は原本の直系と思われる。北条の専称寺(せんしょうじ)(時宗)は、元弘元年(1331)藤沢の清浄光寺(遊行寺)の末寺として創建されたので、本末の証として、本山所蔵の絵巻を忠実に転写したものが招来(しょうらい)されたのであろう。中世文字が散見され、登場の僧・尼の区別が明瞭であり、一遍の姿も他の登場人物に比べ自然の大きさで表現されている。着衣も他僧と区別のない旅衣であり、また初期時宗(じしゅう)教団の行儀法則を表現する等、室町期の特色が濃い。巻1の1章部分と巻10の奥書きを欠く以外は完全である。
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