解題・説明
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像高86.8cm、檜(ひのき)材の漆箔(しっぱく)像で、頭・体幹部は縦一材で刻み、両耳前で縦に前後に割矧(わりは)ぎ、さらに三道下際で頭・体を割矧いでいる。像の形は螺髪(らほつ)彫出、肉髻(にっけい)・白毫相(びゃくごうそう)を表わし、納衣(のうえ)は左肩を蔽(おお)い右肩に懸(かか)り、いわゆる来迎印(らいごういん)を結ぶ坐像である。 目を伏せるやさしい丸顔の表情や、おだやかな肉付け、浅くなだらかなひだの起伏などに、平安末期の作風が顕著である。しかし、高く大きい肉髻、鉢の開いた感じの顔立ち、胸元から腹部にかけての衣のひるがえり方、右足に懸る衣紋の複雑な小波などに新趣がうかがわれ、さらに腹や膝のふくらみにも厚みが加わり、鎌倉時代初期の制作とも考えられる。当地方における12世紀末葉頃の数少ない遺品の一つである。明応9年(1500)の修理銘によって当時の願主や仏師の名を知り得るのも貴重である。
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