解題・説明
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平櫛田中の現存する最初期の作品で、海軍服を着た少年が国歌を口ずさむ様子を写し取ったものである。少年が帽子を手にした部分の窪んだ様子をはじめ、頭髪、靴の縫い目、口からのぞく歯に至るまで細部を一木であらわした技術は、本格的に彫刻活動を始めて4年足らずの時期に作られた作品とは思えないもので、天性の才能を感じさせる。この作品を貫いている、対象をありのままに再現しようとする制作態度は、制作時の田中が明治30年代の美術界で主流だった自然主義の影響下にあったことを示している。 1901(明治34)年に当時の美術家たちがこぞって参加していた日本美術協会展に出品し、見事銀牌を受賞した。
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