解題・説明
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鏡獅子(正式には春興鏡獅子)は新歌舞伎十八番の一つで、九代目市川団十郎が創案し、六代目尾上菊五郎(以下、六代目)によって絢爛(けんらん)たる演目として完成された。 1936(昭和11)年に歌舞伎座に鏡獅子がかかると、田中は25日間も歌舞伎座に通いつめ、様々な場所から十分に観察したうえで作品のポーズを決めた。制作の過程では、田中が歌舞伎の厚い衣装によって隠れてしまう人体の構造を把握するため六代目に裸でポーズを取ってもらい、裸像の試作を制作している。六代目のファンの資金援助によって始められたこの制作は、制作の半ばで援助が打ち切られ、戦争による中断を挟んで完成したのが1958(昭和33)年。制作に着手してから実に22年もの歳月が経過していた。像高2メートルを超えるこの田中畢生の大作は、現在国立劇場のロビーに飾られている(東京国立近代美術館より永久寄託)。 本作は、国立劇場の《鏡獅子》の完成後、4分の1のスケールの試作原型に基づいて制作されたものである。
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