解題・説明
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『白地かすり』は、県立酒田高等女学校本科4年生の佐藤とし江が夏季休暇の宿題として書いた日記である。7月27日から8月31日までの36日間について記されており、随所に担任の先生の朱書きのコメントが添えられている。明治38年8月は日露戦争終結間近であり、一日目の日記には役場へ行き出征した義兄が生死不明と知らされ驚いたことが記されている。また『酒田市史』には8月水害があったとされるが、日記の日々の天気模様の記載と8月7日の「堤防から水があふれていた」という記述が、史実を裏付けるものとなっている。日常生活では、唱歌を歌い、バイオリンや手風琴(アコーディオン)を奏し、ワッフルを焼いて家族にふるまい、大好物の餅や団子をお腹いっぱい食べたなどとあり、「少しも偽りなく飾りなく露骨に無邪気に書かれてあったね」と先生の講評に書いてあるとおり、数え年で16歳の女学生のおおらかで飾らない人柄に思わず頬が緩む。古典文学風の光景描写や、読んでいた小説の影響かと思われる文体の変化など、当時の女学生の置かれていた教育・文化の環境なども考えさせられ興味深いものとなっている。
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