解題・説明
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この原稿「中学校事件」は、作者である葉山が実際に体験した旧制豊津中学における同盟休校事件を下敷きに創作されたもので、葉山嘉樹全集等には未掲載の作品です。二百字詰め原稿用紙68枚分の新聞連載小説(1929.9脱稿)で、夕刊大阪新聞への掲載予定が取止められたものを当館が購入したものですが、平成30(2018)年に葉山の後輩となる育徳館高等学校の文芸部員がこのことを知り、記念事業として当館と共に本原稿の翻刻作業に取組んだことから、その成果の普及版として公表するものです。 なお、本作は①明治・大正期の各地の旧制中学で頻発した学校紛擾の様相を、地元を題材に想起させるもの ②その内容が当局の摘発を恐れて自主規制したもののよう という点から見て、貴重な文学作品であると共に戦前期の世相をうかがわせる歴史資料にもなっています。
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