解題・説明
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この書簡は「中学校事件」原稿に付属していたもので、原稿と一体のものです。大阪新聞社の社用封筒に原稿と共に収容されていたようですが、掲載見合せのためいわゆる「お蔵入り」した状況を物語るかのようです。 留意されるのは書簡と原稿に2年以上のタイムラグのあることで、考えられることの一つは治安維持法改正(昭和3[1928]年6月)等で思想統制が強化される中、学生の反体制的ともいえる運動を顕揚美化するがごとき小説が当局に咎められることを恐れて「自主規制」することを巡り、大阪新聞社と葉山の間にやりとりがあった可能性です。 実際の処は不明ですが、ファシズムと戦争へと時代が傾く中で交わされた「表現の担い手たち」の苦悶を語る貴重な一記録といえそうです。
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