東京都現代美術館美術図書室

創作版画誌コレクション ※限定公開

東京都現代美術館美術図書室は、前身である東京都美術館美術図書室の時代から、創作版画誌を積極的に収集してきました。その多くは版画作家のご遺族やコレクターの方々からご寄贈いただいたもので、その数は約500点にのぼります。

「創作版画誌」とは、オリジナル版画作品を頁に貼付した、あるいは版画作品自体を綴じた逐次刊行物です。明治時代中期から昭和初期にかけて、いわゆる「創作版画運動」の隆盛にともなって盛んに出版されました。

創作版画誌とは

江戸時代までの日本の版画制作においては、浮世絵に代表されるように「絵を描く」「版を彫る」「紙に擦る」という3つの工程が分業でおこなわれていました。

しかし明治30年代終わり(1900年代初頭)に、山本鼎(1882~1946年)、石井柏亭(1882~1958年)、森田恒友(1881~1933年)ら若き美術家たちが、この3つの工程を通して1人の作家が創作する「自画・自刻・自刷」を提唱しました。こうした主張から生まれた「創作版画運動」は、やがて日本の版画創作の主流となり、創作版画の団体や愛好会が設立されることになります。

また山本鼎らが自作の詩と版画を掲載する雑誌を発刊したことなどから、雑誌そのものが芸術作品であるという概念が定着しました。版画という複製可能な創作物が雑誌という媒体を得たことによって、作品発表の場としての「創作版画誌」というジャンルが生まれました。

創作版画運動の全国的な拡大によって、各地で地域性の強い版画誌が創刊されました。川上澄生(1895~1972年)、棟方志功(1903~1975年)ら人気作家たちも同人に加わり、作品を掲載しました。

昭和初期まで隆盛をきわめた創作版画誌各誌においては、彫刻刀の勢いを生かした素朴な作風から、大正モダニズムやプロレタリア美術の影響、恩地孝四郎(1891~1955年)に代表される抽象的・表現主義的な傾向まで、近代日本の多彩な版画表現を見ることができます。

資料について

「創作版画誌コレクション」には、創作版画誌の黎明期に山本鼎らによって刊行された『平旦』、大正時代に恩地孝四郎、藤森静雄(1891~1943年)、田中恭吉(1892~1915年)の3名が発行した『月映』などの近代日本美術史上、重要な資料が多数含まれます。

『さとぽろ』(北海道)や『版画長崎』(長崎県)など、地方で出版されたタイトルが広範囲に渡って収集されていることも大きな特徴です。

また諏訪兼紀(1897~1932年)や前田藤四郎(1904~1990年)ら作家自身が所蔵していた資料を多数ご寄贈いただいたことが、コレクションの充実につながっています。

資料一覧

画像をクリックすると高精細画像が表示されます。画像タイトルをクリックすると目録データが表示されます。

凡例

・冊子体の資料については、資料の状態を再現するために、方向を統一して見開きで表示している。そのため、表紙と裏表紙の両面から記載がはじまる資料については、文字や図の天地が逆に表示されることがある。

・冊子体資料は原則として表紙側から順番に表示するが、どちらが表紙か判別しがたい場合や、表紙とそれ以外の部分が天地逆になっている場合などは、東京都現代美術館美術図書室の基準によって表示順を決定した。

・当資料の画像のコピーをご希望の方は、司書カウンターにお申し出ください。(白黒1枚30円、カラー1枚100円)

当資料の画像データの利用にあたっては、東京都現代美術館美術図書室への申請が必要です。無断使用にともない生じた問題について、当室では一切責任を負いません。

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