1951年11月から55年1月までフランスに留学するが、加藤はフランス国内だけではなく、スイス、イタリア、ドイツ、イギリス、オランダなどを旅する。ルネサンス絵画を観るためにイタリアに行ったのは1952年秋のことである。フィレンツェでのちに結婚することとなるヒルダ・シュタインメッツと出会い、ヒルダに愛を感じる。加藤は女性に愛を感じたとき詩を詠むことが多く、本ノート(縦17センチ、横11センチ)には、ヒルダへの愛が詠まれた詩や、ヒルダへの愛をきっかけとして訪れた地に対する覚書が綴られる。ノートに表題は付けられていないが、加藤文庫ではこれを「詩作ノート」と名づけた。書かれた年代は1952年から54年にかけてだろう。ヒルダへの愛の喜びだけではなく、愛の苦しみや愛の悩みも詠まれる。