「ヴァンクーヴァー日記」と読む。安保改定問題が終わった1960年秋に、加藤はカナダのヴァンクーヴァーにあるブリティッシュ・コロンビア大学に招かれて、准教授として赴任する。以後、1969年まで同大学に籍を置くが、その時代を加藤は「蓄積の時代」とのちに呼んでいる。本ノートは1962年から1963年にかけて採られた。日記というよりもメモ書き、あるいは読書ノートという性格が強い。冷戦時代の国際政治に関するメモ書きが多いが、これらは1963年『毎日グラフ』に連載された「加藤周一の世界漫遊記」などに活かされており、加藤の国際政治への目配りの方法をうかがい知ることができる。日本文学史へのメモは書かれていない。